いろは歌
「いろは歌」は、四十八文字の全てを一度だけ使って作られた歌です。このような歌を字母歌と言います。
「いろは歌」がいつごろ作られ、誰が作者であるかは、様々な説がありますが、この短い歌の中に暗号が隠されているとして、「百人一首」の謎と共に、かなり昔から研究されていました。
謎解きの例として、
いろはにほへ(と)
ちりぬるをわ(か)
よたれそつね(な)
らむうゐのお(く)
やまけふこえ(て)
あさきゆめみ(し)
ゑひもせ(す)
このように7文字で折り返して記述すると、行の終わりの文字「沓」を順に読むと、「とかなくてしす」。つまり「咎無くて死す」になります。そこでこれは、無実の罪を着せられて死んだ、万葉の歌人、柿本人麿が怨念を込めて残した暗号では無いか、または誰かが柿本人麿の思いを暗号にして後世に伝えようとしたのではないかと推理されています。
この暗号は江戸時代には既に解読されていたと思われます。それを裏付けるものとして、歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」があげられます。「蔵」は大石蔵之助を指していることは察しがつきますが、「仮名手本」とはなんでしょうか。
江戸時代、仮名のお手本は「いろは歌」以外にありません。では「いろは歌」と仇討ちの関連性はどこにあるのでしょうか。まず、赤穂浪士四十七士は「ん」を除く「いろは歌」四十七文字が当てはまります。そして、四十七人全員が切腹を命じられたことは「咎無くて死す」だと暗号で示しているのです。
当時の江戸幕府、五代将軍綱吉を正面切って批判することなど到底できません。時代を鎌倉に設定し、名前を変えてお芝居は作られたのです。また同じように、浄瑠璃の題名「菅原伝授手習鑑」においても「手習いの鑑」は「いろは歌」を指していると言われています。
万葉の昔から語り継がれてきた「いろは歌」に作者がそっと隠した暗号の本当の意味はわかりません。しかし、「いろは歌」を始め、日本に伝わる古事記、万葉集などには、古代の秘密を伝える重要な鍵が、神秘的、且つ巧妙に存在しています。これらを紐解くことは、日本の原点を知ることに繋がっています。