第180回国会 内閣委員会に小林節氏が出席した。

第180回国会 内閣委員会での参考人質議があり、慶應義塾大学法学部教授の小林節氏が出席した。

しかし、その質疑応答には甚だ疑問を感じざるを得ない内容となっている。

溯ること2011年11月29日大阪日日新聞コラム 一刀両断で『暴力団排除条例に対する疑問』というタイトルで以下のように述べている。

「さる10月1日に東京都と沖縄県で暴力団排除条例が施工され、これで、日本国内全国一律に同じ内容の法規範が適用されることとなった。 多少専門的な話で恐縮だが、警察庁の指導で全国一律に同じ条例を47本も制定するならば、なぜ国会でひとつ「法律」を制定しなかったのか、不可解である。「暴力団」対策の基準がこの狭い日本で地域によって差があってよいはずもなく、現に、条例の内容に地域差などない。ならば、これは、犯罪事実の存在を前提に国民の自由を制限しようとする権力発動の問題である以上、人権問題であり、それは堂々と法律により根拠づけられるべきが、法治主義の原則であろう。 それを、きちんとした議論も経ずに都道府県議会で通してしまった立法の手法には疑問を禁じ得ない。」 (一部新聞記事より抜粋)

と、立法の手法に大いに疑問を投げかけている。

また、次のようにも述べている。

「しかし、私たちは一方的に「暴力団」と呼んでしまっているが、実は、これは「任侠」団体と呼ぶべきものであろう。それは、日本の歴史の中から生まれた、(正しくても)弱い(ために損を強いられている)者を助け、強い(が故に傲慢で、他者を卑しめる)者をくじき、義のためには命も金も惜しまない‥主義者の結社である。これは、あの有名な清水次郎長のように、国家の機能が本来的に不完全なために、いわば物陰の不正義を正すために自然発生的に生まれた団体である。」 (一部新聞記事より抜粋)

実に堂々とした、氏らしい正論を展開していたのである。ところが・・・・・

まことに見事なまでの変節ぶりである。

この短期間に小林節氏には、
一体何があったというのか・・・

弁護士であり法学博士でもある氏が、言論の自由があるとはいえその主張を180度も変えてしまうということが現実におきているということである。

以下内閣委員会の参議院会議録である。

第180回国会 内閣委員会 第11号平成二十四年六月十九日(火曜日)午前十時五分開会
○委員長(芝博一君) ただいまから内閣委員会を開会をいたします。
まず、委員の異動について御報告をいたします。
昨日までに、石橋通宏君、藤本祐司君、江田五月君、古川俊治君及び水岡俊一君が委員を辞任され、その補欠として平野達男君、難波奨二君、岡崎トミ子君、中曽根弘文君及び武内則男君が選任をされました。
─────────────
○委員長(芝博一君) それでは、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
本日御出席をいただいております参考人の方々を御紹介いたします。
まず、北九州市長北橋健治君でございます。よろしくお願いいたします。
続きまして、弁護士疋田淳君でございます。よろしくお願いいたします。
続きまして、慶應義塾大学法学部教授小林節君でございます。よろしくお願いいたします。
この際、御参考人の方々に、一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
参考人の皆様には忌憚のない御意見をお述べいただきまして、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
議事の進め方でございますが、北橋参考人、疋田参考人、小林参考人の順にお一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。
また、発言の際は、挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
なお、発言は着席のままで結構でございます。それでは、よろしくお願いを申し上げます。
まず、北橋参考人にお願いをいたします。北橋参考人。
○参考人(北橋健治君) 座ったままで失礼をいたします。
大変国会お忙しい中、暴対法改正案につきまして国会議員の先生方に鋭意御審議を進めていただいておりますこと、厚くお礼を申し上げたいと思います。また、審議に当たりまして、関係する地元自治体の意見を陳述するチャンスを与えていただきましたこと、重ねてお礼を申し上げたいと思います。
まず、私からは、福岡県における暴力団の活動実態、そして県を挙げた対策から述べさせていただきたいと思います。
福岡県では、全国に二十一あります指定暴力団のうち五つの団体の本部が存在しております。そして、近年の暴力団などによる発砲事件の発生は福岡県が毎年のように全国ワースト一位となりまして、誠に憂慮すべき事態が続いております。
このような状況の中、昨年三月に、福岡県内におきまして経済界のリーダー宅に手りゅう弾が投げ込まれるという事件が発生をいたしました。これを契機に、福岡県、北九州市、福岡市、県公安委員会、県警察とでトップ会議を開催いたしまして、暴力団対策法の抜本的な改正などを強く要請していくことを決定いたしました。暴力団撲滅に向けた体制を取る旨をその会議で確認をし、その後も機会あるごとに国に対し申入れを実施してまいりました。これは、福岡県下の各地域におきまして、暴力団同士の抗争事件や、企業や一般市民を狙った銃撃事件が後を絶たないためであります。
このような状況は、県下の各地域におきまして、まず発砲事件などの多発により住民へ不安と脅威を与え、都市の著しいイメージダウンを招いております。その結果、県外ほかの地域に対しましても、いつ暴力団による抗争事件に巻き込まれるか分からない地域、一般の企業や市民を執拗に攻撃する悪質な暴力団がいる町といったイメージが広がり、企業進出や観光誘致など、地域の経済発展そのものに非常に暗い影を落としております。
中でも、私が首長を務めております北九州市に本部を置く指定暴力団は、事業活動などからの暴力団排除の動きに対し挑発的であります。自己の意に沿わなければ不特定多数の人を殺傷することもちゅうちょしないなど、極めて卑劣な手口を繰り返してまいりました。市民の間では、まさに暴力団というよりテロ集団であると、そういった見方が広まっているのも過言ではありません。
私の町では、今年に入り、福岡県警察による暴力団対策の更なる推進に加えまして、四月の下旬からは、全国の都道府県警察からの警察官の応援によりまして、発砲事件発生地域の児童の見守りを始め、市内の治安確保のための活動を日夜行っていただいております。事実、市内において、警視庁のパトカーを始め、地元ナンバー以外の警察車両によるパトロール活動や検問が至る所で実施されるなど、市民生活の安全確保の面では大変有り難い状況ではあります。しかし、これは同時に、一般市民から見ますと、やはり異常な事態と言わざるを得ない状況が続いているのも事実であります。
ここで、私の町に本部を置く指定暴力団の特徴が出ていると思われるケースを三つ説明をさせていただきます。
一つは、現在、県下で続く発砲事件のうち、北九州地区で発生した事件については、警察においても本市に拠点を置く指定暴力団の犯行と見て捜査が続けられているとお聞きしております。中でも、昨年十一月に発生しました建設会社役員の射殺事件、本年四月に発生しました元警察官への銃撃事件などは、いずれもいまだ市民が活動している夕刻過ぎや子供たちが通学している早朝の時間帯に住宅街で待ち伏せをして人を銃撃するという卑劣な犯行が平気で敢行されております。この常識では考えられない蛮行によりまして、地域住民の生活は不安と脅威にさらされており、さらに直接人を狙うという行き着くところまでエスカレートした手口が平穏な地域生活に重大な影響を与え続けております。
二つの例であります。平成二十二年三月、福岡県暴力団排除条例の施行直前に、突如として組の名前が入った看板を掲げて事務所を設置いたしました。暴対法施行以降、暴力団はその実態を隠蔽して活動する傾向にある中、まして県の暴力団排除条例が施行されれば設置自体が禁止される目の前の小学校、幼稚園の間近にこれ見よがしに組名の入った看板を掲げるなど、常識では考えられない行動であります。
三つ目の例であります。私の町にとりまして忘れられない事件があります。平成十五年です。都心部の繁華街のクラブに手りゅう弾を投げ込んで、従業員ら十一名に重軽傷を負わせたという事件であります。これは暴力追放運動に積極的にかかわっていたクラブの経営者を標的としたものです。その手口は、手りゅう弾という兵器を使い、関係のない人まで巻き込んで殺傷する、断じて許されない卑劣を極めた犯罪であります。
今回の改正法案について述べさせていただきます。
暴力団同士の抗争事件や暴力団によると思われる凶悪犯罪の抑止は、取締り強化や犯人の検挙が最も有効と考えられます。また、これらが住民の切実なる願いでもあります。この住民の悲願であります暴力団取締りの強化を盛り込んだ改正法案がようやく国会審議の段階に参りました。現在、福岡県下で指定暴力団同士の抗争事件が続いている地域にとりましては、この改正法案によりまして、特定抗争指定暴力団という新たな規制内容が盛り込まれ、既存の事務所使用制限の命令を発出できる範囲が広がります。
これに加えまして、先ほど御説明のとおり、本市に拠点を置く指定暴力団は一般市民に対する発砲を繰り返すなど、更に危険な暴力団であるにもかかわらず、現行の暴対法では事務所の使用制限すら掛けられない状況が続いております。今回の改正法案によりますと、一定の場合に不当要求の直罰化や事務所の使用制限が掛けられる特定危険指定暴力団に該当することが明らかであります。また、先ほど事例として御説明した新事務所設置の際などは、行政が全面支援を行うとはいえ、周辺住民が矢面となって粘り強い撤去運動を展開する必要が生じます。そこで、今回の改正法案によりますと、代理訴訟という形で適格団体が委託を受け、住民の事務所使用差止め請求を行うことができる制度が新設されます。事務所周辺住民の安全、安心の確保に極めて有効な内容が盛り込まれております。
以上のとおり、本改正法案は、北九州市を始め福岡県下の全域にとりまして大変に有り難い法案であります。是非ともこの国会における成立をよろしくお願い申し上げたいと思います。
以上であります。
○委員長(芝博一君) 大変ありがとうございました。北橋参考人の意見陳述でございました。
次に、疋田参考人にお願いをいたします。疋田参考人、お願いいたします。
○参考人(疋田淳君) 日本弁護士連合会の民事介入暴力対策委員会で、先月まで二年間委員長をしておりました弁護士の疋田でございます。大阪から参っております。
本日は、このような貴重な機会を設けていただきまして、誠にありがとうございます。私は、暴力団の被害に遭っている市民の方々とともに様々な活動をこれまで行っており、現場の弁護士の立場から暴力団対策法改正案についての意見を述べさせていただきたいと思います。
日弁連民暴委員会は昭和五十五年に発足し、今年で三十二年目を迎えたところであります。その間、日弁連民暴委員会の弁護士を中心として暴力団の被害に遭った市民、企業の代理人として暴力団員との交渉や訴訟の提起を行ったり、暴力団の被害を防止しようとする企業や行政からの相談に応じてアドバイスを行うなど、全国各地で様々な活動を行ってきたところでありますが、本日は、私ども弁護士が行ってきたこうした活動のうち、今回の改正案と特に関係が深いと考えられます暴力団事務所撤去運動、企業対象暴力対策、行政対象暴力対策の三点から本改正案に対しての意見を述べさせていただきます。
まず、暴力団事務所撤去運動の観点からの意見を申し上げます。
弁護士が民暴対策として長年にわたって取り組んできた活動の一つに、暴力団事務所の使用差止めを求める訴訟の提起や仮処分の申立てがあります。暴力団事務所は、暴力団の対立抗争の際には拳銃や手りゅう弾などの凶器を使用した攻撃の標的となったり、あるいは対立相手の暴力団員に対する攻撃の拠点となったりしており、また対立抗争が発生していない場合であっても、事務所は定例会等のため多くの暴力団員が集まる場所であることから、その周辺で生活する住民は、対立抗争の巻き添えになるのではないか、あるいは暴力団員から何らかの危害を加えられるのではないかといった恐怖にさらされながら生活しているのが現状であります。また、暴力団事務所が公然と市中に存在するというのも世界中でも類を見ない異常な状況であります。
こうしたことから、暴力団事務所の付近で生活している住民が、その生命、身体の安全を確保する権利、すなわち人格権に基づいて暴力団事務所の使用差止め裁判をするという方法が取られるようになりました。昭和六十二年に静岡地裁で暴力団事務所の使用を禁止する仮処分が認められましたいわゆる一力一家事件を皮切りに、これまで暴力団事務所の使用差止めを認める仮処分や判決が多数出されております。こうした人格権に基づく暴力団事務所排除活動が各地で着実に成果を上げてきたところでもあります。
そこで、こうした地域住民と一体となった暴力団事務所の撤去運動にかかわる弁護士の立場から、本改正案についての意見を申し上げます。
まず、適格都道府県センターによる事務所使用差止め制度でありますが、先ほども申し上げましたように、暴力団事務所の使用差止めを求める訴訟手続では、住民が訴訟活動を含めた活動の前面に出るため、地域住民のリーダーが暴力団からの攻撃や嫌がらせを受けることがあり、実際にも平成十九年から二十年にかけて鹿児島県内で行われた暴力団事務所撤去運動では、事務所の追放に向けて住民が結成した協議会の会長が路上で暴力団員に刺されるという事件が発生しております。また、平成二十二年から二十三年にかけて福岡県内で発生しました暴力団撤去運動では、撤去運動のリーダーの自宅に銃弾六発が打ち込まれるという事件も発生しております。
そこで、この住民の精神的、経済的、肉体的負担を軽減するためには、暴力団事務所の差止めを求める事件を担当した弁護士の立場からとしては、都道府県暴追センターにこうした法的手段の当事者になってもらいたいという要望をかねてから申し上げておりました。
今回の改正により設けられる適格都道府県センターによる事務所使用差止め請求制度はこうした要望にこたえるものとして高く評価しております。また、この制度では、適格センターが、任意的訴訟担当の仕組みにより、人格権の主体である地域住民に代わって訴訟を追行するという手段が取られていますが、これは、現行の民事訴訟法の枠内において、これまで蓄積された暴力団事務所撤去運動の成果を活用しつつ、これを更に一歩前進させるというものであります。非常に実用性の高い制度であると考えております。
また、この制度については、弁護士代理の原則との関係を整理しておく必要がありますが、本制度では、訴訟手続は弁護士に追行させなければならないと明文で定められておりますので、この点についての問題はないと考えております。
次に、特定抗争指定暴力団の指定制度でありますが、対立抗争の当事者であります暴力団の活動地域で生活する人々が最も恐れているのは、対立抗争の一環として行われる拳銃、手りゅう弾を使用した暴力行為の巻き添えとして自分やその家族が犠牲になるということであります。
平成二十年から二十一年にかけて、九州誠道会との対立抗争を継続して行っております道仁会の暴力団事務所については、その付近住民が事務所の使用差止めを求める仮処分を申し立て、裁判所がその使用差止めを認めているところでありますが、こうした暴力団事務所の付近住民を始めとする暴力団の活動地域で生活する人々は、対立抗争が直ちに収束し、平穏な生活を取り戻すことを切実に願っているところであります。
今回の改正で設けられる特定抗争指定暴力団の指定制度は、こうした切実な願いにこたえようとするものであり、その必要性は明らかであると考えます。もちろん、こうした規制を導入するに当たっては、人権の保障という観点からも十分な検討を加える必要がありますが、この制度では、指定暴力団の中から特定抗争指定暴力団を指定し、その構成員に対する規制を強化するという仕組みを取っております。暴力団以外の団体が規制の対象となるおそれは全くないと言えます。
また、この制度によって、特定抗争指定暴力団の構成員は対立相手の構成員に付きまとったり、その居宅の付近をうろついたりすることは禁止されることになりますが、こうした行為は類型的に対立抗争を誘発するおそれがあることから禁止の対象とする必要があります。また、付きまといやうろつきといった規定は、他の刑罰法規においても用例があることから、構成要件の明確性の観点からも問題はないと考えます。
次に、企業対象暴力の観点からの意見を申し上げます。
暴力団は、依然として企業に対して物品等の購入や寄附金などの不当要求をしている実態があります。企業に対するアンケート調査においても、このような企業対象暴力の被害を受けたことがあるという回答がたくさん寄せられております。民暴対策にかかわる弁護士としては、このような暴力団の不当要求に対する被害を防止するため、企業に対して対応要領のアドバイスを行うなどの取組を行ってきたところであります。
近年は、企業の側においても、暴力団員との取引を行うことによって社会的な信用を失うなどの損失を被ることが強く意識されることになって、暴力団との関係遮断がその社会的責任であるということが強く自覚されることになってきたところであります。これを受けて弁護士の役割も変化が生じてきておりまして、企業に対する個別の不当要求事案を拒絶する代理人としての役割を果たすだけでなく、各企業が使用する契約書において、相手方が暴力団員であることが判明した場合に契約の解除を行うことができる、いわゆる暴力団排除条項、暴排条項の導入の検討、そして暴排条項に基づく契約の解除など、その活動領域を広めているところであります。
このような動きを受けまして、日弁連民暴委員会を中心として、証券業界、銀行業界等の各業界との連携も図っております。私も、平成九年から約十年間、整理回収機構の顧問として暴力団からの債権回収を担当しておりましたが、その経験上、暴力団の資金源を遮断する必要性を痛感しております。
そこで、企業対象暴力にかかわる弁護士の立場から、本改正についての意見を申し上げますが、まず特定危険指定暴力団の指定についてでありますが、先ほど申し上げましたように、近年、暴力団の関係遮断が企業の社会的責任であることが自覚されるようになり、また、全国でいわゆる暴排条例が施行され、暴力団の資金獲得活動がますます困難になってきていることから、暴力団の側も危機感を強めており、暴力団の不当な要求に応じない企業関係者に対してその凶暴性をあらわにする傾向を見せているところであります。先ほど北九州市長がおっしゃられた事例は、まさしくそのとおりだと思います。このような事案の発生は北九州地区に限られるものではありません。平成二十二年には名古屋市でも、みかじめ料の支払を拒絶した飲食店にガソリンをまいて火を付け従業員三名を殺傷するという悲惨な事件が発生しております。
このような暴力団の凶悪化の傾向は、企業や住民に対して著しい恐怖感を与えるだけではなく、企業による健全な経済活動をも脅かすものであります。このような暴力団による凶悪な行為に対する規制の多くは多くの企業や住民が切実に願っているところであります。今回の特定危険指定暴力団の指定制度は、このような観点から、特に危険な暴力団の暴力団員に対する規制を強化するものであり、その必要性は極めて高いものと考えます。
この特定危険指定暴力団の指定によって都道府県公安委員会が指定した警戒区域内で不当要求を行った構成員は、行政命令を介することなく直ちに罰則によって処罰されることになりますが、特に危険な暴力行為を繰り返すおそれがある暴力団員に対しては規制強化によってその暴力行為を抑止する必要があり、また罰則をもって禁止される行為は既に暴対法において禁止行為として定められている暴力的要求行為であることから、規制の内容としても妥当なものであると考えます。
次に、指定暴力団員による不当な取引要求に対する規制強化でありますが、先ほど申しましたように、近年、暴力団との関係遮断が企業の社会責任であるということが自覚されるようになったことから、暴力団との取引を拒絶したいと考える事業者が増加しているところであり、暴力団員がそのような取引を拒絶する事業者に対して、その意思に反して取引を強制しようとする動きも見られるところであります。
今回の改正では、暴力団員が一定の取引を拒絶する事業者に対して暴力団の威力を示して取引を要求をする行為が新たに禁止されることになりますが、これは暴力団との取引拒絶をしたいという事業者の自由な意思を保護するものであり、そのような事業者の意思に反して暴力団の威力を示して取引を強制しようとすることは明らかに不当な行為であることから、妥当な改正内容であると考えます。
また、今回の改正では、暴力団員に不当な利益をさせないという事業者の責務規定を新たに設けることとされていますが、暴力団との取引を拒絶しようとする事業者にとってはこのような取引拒絶の法的根拠が設けられることは大変心強いものであります。他方で、本規定はあくまで事業者の自主的な取組を後押しするための努力義務規定であることから、これによって事業者の経営活動、経済活動が不当な制限を受けるということはなく、妥当な改正内容であると考えます。
最後に、行政対象暴力対策の観点から意見を申し上げます。
行政対象暴力とは、暴力団員が暴行、脅迫等の不当な手段によって行政庁に対して違反又は不当な行為を要求する行為であり、バブル崩壊後の企業における暴力団対策の進展を受け、暴力団がいまだ危機管理対策が十分でなかった行政に対してその矛先を向けるようになったものであります。このような行政対象暴力は、行政の透明性と公正さを損ない、公権力が暴力に支配され、行政の透明性と公正さを行う、公的な財産が暴力団に利用されることを意味するものであります。公正な社会の実現を妨げる不当な行為であることは明らかであります。
そこで、各弁護士会の民暴委員会では、平成十年ころから行政に対する暴力の実態について研究するとともに、地方公共団体とともにこれに対する対応策を検討するなど、行政と一体となってこうした行政対象暴力の防止のための取組を進めていたところであります。私自身も大阪府下の自治体の顧問弁護士をしておりますが、行政対象暴力への対応は日々行っております。平成十九年に日弁連が行ったアンケートによれば、平成十四年のアンケートと同様に、地方公共団体の職員の約三割が暴力団員による不当要求の被害を受けているという実態が明らかになっているところでもありますし、暴力団員による行政対象暴力が今後も様々な形態を取りながら敢行されることと思われます。
今回の改正では、国等の公共工事に関する暴力的要求行為の規制を国等が行う入札や契約全般に拡大することとされていますが、様々な手段を用いて行政に対して不当な行為を行い、経済的な利益を獲得しようとしている暴力団の活動の実態を踏まえれば、行政対象暴力の規制に抜け穴が生じないようにする必要があり、妥当な改正内容であると考えます。
また、今回の改正では、行政に暴力団排除活動に努める責務がある旨を明記することとされていますが、近年の民間における暴力団排除活動の機運の高まりに鑑みれば、行政が率先してその範を示す必要があり、また、そのような責務を明記することは行政対象暴力による被害を防止するという観点から非常に意義があることから、妥当な改正内容であると考えます。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
○委員長(芝博一君) 疋田参考人、ありがとうございました。
次に、小林参考人にお願いをいたします。
○参考人(小林節君) 私は現場の首長でも日弁連の活動家でもありませんので、憲法学者としてこの法案を見せていただきました。こういう法律が必要だという社会的事実関係、いわゆる立法事実については今お二人の参考人がおっしゃったとおりでありまして、要するに社会の変化に伴って危険な団体もやり方を微妙に変えてきておりますから、罪刑法定主義の観点からいけば、それも駄目だよ、それも駄目だよときちんと規定してあげないといけないわけで、そういう意味で今回の改正は妥当な改正であると私は思います。
ただ、二点、疑問をというより問題提起をさせていただきます。
先ほど疋田先生のお話にもありました、事業者の、暴力団員に不当な利益を得させることがないようにという努力義務規定、これは正しいと思います、制度そのものは。つまり、暴力団との関係を断ろうとする人に法的根拠を与える、正しいと思います。ただ、業界によっては、例えばはっきり言うと銀行なんですけれども、銀行というのは実にディフェンシブな業界で、組織としても落ち度を好まない。ということは、組織、自分のデスクで落ち度を好まないので、念のためということをいろいろやってしまうところでありまして、たまたま先週、ああ、なるほど、こういうことがあるんだと。
大阪の事例なんですけれども、知ったんですけれども、要するに、企業舎弟ということが明らかになって、しかもそれが犯罪になる行為をしたのでぱかっと捕まったんですね。要するに、ある会社が乗っ取られて、ある組に、そこを注目していた警察が違法行為を見付けてその関係者を捕まえたんですけれども、それも社会で活動している会社ですから乗っ取られる前からいろんな取引があって、そこと善意で取引していた会社に送金がなくなってしまった。つまり、集金を代行してもらっていたんですけれども、その会社の役員が捕まったために銀行が一切止めてしまった。そうすると、善意の第三者に二か月お金が来ないと手形が飛んでしまって大変なことになる。そのとき、善意の第三者でありますと証明が大変なんですね。ただ、銀行員としては後で自分の落ち度になりたくないから、何というか、悪魔の証明みたいなことを要求する、あなた方、きれいであることを証明してください。これ大変なことでありまして、一時的には、たまたま検挙した警察当局にきちんと正式にお話しして、この会社は関係ないと認識しているでしょうということを言っていただいて事なきを得たんですけれども。
たまたま弁護士の個人的人脈でやるのではなくて、この努力義務が過剰規制になってしまった場合の救済措置をどこかに用意しておかれたらよろしかろう。つまり、暴力団の資金源を断つことはとても大事なことで、これは絶対否定する理由がありません。だけど、暴力団も社会で存在しておりますし、企業を乗っ取って侵食したりしているわけでありまして、そのとき、乗っ取られる前のまともな会社と善意で取引していた人があおりを食らってしまう、これを公式に救済する手続をお考えいただきたいのが一つです。
それから、迅速果敢にやらないと、彼らは過激で、先ほどのお二方の御説明のように、本当に私はその地域に住んでいないでよかったと思うほど恐ろしいことが起きているわけでありまして、でも、だからといって、法案では、指定したり命令したりする手続に、行政手続法三章、すなわち告知と聴聞ですね、ノーティス・アンド・ヒアリング、これ、要するに国家権力が国民に対して自由を制約しようとする場合には、前もっていかなる理由であなたにいかなる不利益を与えようとしているよということを告知して、逮捕状だってそうじゃないですか、それに対して本人に構えて抵抗するチャンスを一旦あげるんですね。フェアプレーの精神です。
法の世界というのは、御存じのとおり、戦争の世界、武士道の世界から、武器を捨てて六法全書で戦うわけでありますから、そういう意味で、基本的にはスポーツや戦争と同じフェアプレーの精神がありまして、その告知と聴聞、つまりノーティス・アンド・ヒアリング、告知と、聴聞と弁明ともいろいろ言いますけれども、この制度は、憲法三十一条、明治憲法じゃなくて日本国憲法に導入された、すなわちアメリカ合衆国憲法の修正の十四条とか修正五条、元々はマグナカルタにたどり着くんですね。つまり、国際社会の常識でありまして、特にアメリカというのは多民族国家であるから、内容の一致がなかなか難しいから手続をきちんと踏むという習慣ができて、それ、今世界のスタンダードだと思うんです。
何を言いたいかというと、これを、告知と聴聞の手続を入れることによって引き延ばしをさせろと言っているんではありません。それは、引き延ばしをさせない手続の取り方ってあると思うんです。全くこれがないと、例えば、急に話飛びますけれども、在日米軍の地位協定の問題なんかで、米軍の被疑者に対する裁判権、なぜ日本に与えないかという議論の中に、人権の保障されたアメリカ人を日本の当局に与えたら何されるか分からないという日本、野蛮な国家論が前提にあるんですよね。
そういう意味で、相手がいわゆる彼らでいうところのマフィアであるからといってデュープロセスを与えないというのはいささか野蛮に見えるのではないか。だけれども、それは、法制局もありますし、日本の衆知をもって引き延ばしに使わせないという工夫をした上でこのデュープロセスはきちんとお踏みになった方がよろしいんではないかということを申し上げたいと思います。
それから、話戻りますけど、よく、私も六十三年以上日本で暮らしておりますので、いろんなところでいろんな方にお会いする。幸い大学人という気安さで取引がないものですから、現役の組長さんだと称する方といろいろお話ししてみたりするんですけれども、言い訳としては任侠道なんですね。強きをくじき弱きを助けてどこが悪いと。それはおかしいと思います。つまり、清水次郎長さんの時代は法治国家がなかったわけですから、つまり、人によって権力が恣意的に行使される人治政治の時代でありましたから、権力が間違っていることも露骨にあったわけで、そういうときに、正しいけど弱い人を助けて、強いけど悪い人をくじくという清水の次郎長は存在理由があったと思うんですね。
ただ、明治以降、日本は近代、現代、法治国家として歩んできているわけですから、この法治国家において何か社会的危険が発生したら、それはあくまでも法制度の作用として処理すべきであって、何かボランティア暴力団体に委ねるというのはあり得ない話でありまして、よく、この暴対法のおかげで外国のマフィアが日本にのさばるようになったという議論をされますけど、それはそれで新しい危険に法治国家として新しく対応すればいいだけであって、だからやくざ屋さんに改めて何か自由を与えるという話ではないと思うんです。よくこういう議論をちまたで聞くものですから、これを補足させていただきました。
時間が残っているようでございますけど、私の意見は以上でございます。
○委員長(芝博一君) 小林参考人、ありがとうございました。
以上で参考人の方々からの意見の聴取は終了をいたしました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次発言を願います。
○はたともこ君 民主党のはたともこでございます。
今日は、参考人の先生方、貴重なお話をありがとうございます。
疋田参考人からの現場の生の声、また先輩国会議員でもあられる北橋参考人、まさに重大な脅威にさらされておられる、その鬼気に迫る当事者の切実な御意見、受け止めさせていただきました。一刻も早くこの法案、成立させていかなければならないと思っているところでございます。
私からは大きく三つ伺いたいと思っております。
現在、大きな政策課題となっております生活保護の問題と暴力団との関係でございます。
北橋参考人と疋田参考人に伺います。
暴力団関係者の不正受給の実態はあるのか、また、その暴力団等によるいわゆる貧困ビジネスなどについてどのようにお考えになっておられるのか、御所見を伺います。
また、小林参考人におかれましては、憲法二十五条と生活保護の関係について御所見を伺いたいと思います。
次に、二点目でございます。
北橋参考人と疋田参考人に伺います。
私は薬剤師でございまして、違法ドラッグ、また脱法ドラッグの問題がこのところ大きくクローズアップをされてきているところでございます。
大阪の福島区の商店街の車の暴走、テレビの映像は本当に頭に焼き付いておりますけれども、この違法ドラッグ、脱法ハーブの店舗及びインターネット販売等について、暴力団の関係者の関与の実態があるのかないのか、またそういったところで実感をお感じのところがあれば、御所見を伺いたいと思います。
最後に、三点目といたしまして、小林参考人に伺いたいと思います。
国際組織犯罪防止条約関連で、組織犯罪対策法の共謀罪については私は強く反対をする立場なんでございますが、暴力団対策法の今回の特定抗争指定暴力団などはむしろ参加罪を検討すべきではないかと考えておるんでございますが、先生の御所見を伺いたいと思います。
以上でございます。
○委員長(芝博一君) それではまず、幾つかの質問がございましたけれども、一点目からお願いをしたいと思います。
○参考人(北橋健治君) 生活保護との関係で御質問がございましたが、手元に数字は持っておりませんが、この制度が始まって、時折暴力団の関係者が不正受給していたという実態が明るみに出る、あるいはそれを摘発するということはこれまでにも多々ございました。
本市の場合、孤独死ということで全国に数年前報道されたことをきっかけに、改めて丁寧に対応するということと、不正受給は絶対に許してはいけないということで鋭意取り組んでおりまして、目を光らし、貴重な税金を使うことですから、やっておりますけれども、市民の中には、そういう関係者がいるんではないかといううわさは時折聞きますし、そして、もしもそういう実態があれば調べて排除するということは不退転の決意で続けております。それは、福岡県下どこも同じだと思っております。
貧困ビジネスとのかかわりにつきましては、捜査当局がその辺の情報は詳しくお持ちだと思いますが、いろんなところで活動をしているやに報告を聞いております。そういった意味では、私ども行政としてできることは、事務事業、公共事業以外にもいろんな事務事業がございますが、その全ての分野を見直しをして、そこから暴力団を排除するという規定、規則を一項目ずつ全部立てて、本市の場合も実行いたしております。
したがいまして、市の事務事業からそういうようなことがない、絶対に介入されないように、それは福岡県、それぞれ自治体、懸命に頑張っているところです。
詳しい実態は、よろしければ当局の方に聞いていただければと思います。
○委員長(芝博一君) それじゃ、引き続きまして、疋田参考人に生活保護と貧困ビジネスについてお願いいたします。
○参考人(疋田淳君) 私、先ほども言いましたが、大阪から参っておりまして、御存じのとおり、大阪は大変な生活保護受給率、西成区においては四人に一人というような、ちょっと考えられないような数字の、非常に深刻な状況になっておりますが、御存じのとおり、生活保護領域から暴力団関係者を排除するというのは既に厚労省通達で発出されております。そして、各自治体において、窓口業務を通じて警察への照会を行うことによって未然に防ごうとはしております。しかしながら、なかなかやはり保護の申請数が多いことから、これを適正に排除するというところまでには至っておりません。実際にも、刑事立件、詐欺で刑事立件されたものが多々実際問題としてございます。
また、昨年、宮崎市におきましては、暴力団員であるという照会を受けてこれを排除したところ、裁判を起こされました。一審では暴力団員性が認められませんでしたけれども、実はその者が携帯電話を五台持っていたりですとか、人にお金を貸していたりとか、高額のマンションに住んでいたりとか、そういう金貸しまでやっていたと、そういう実態が警察当局の捜査によって判明して、本年三月に福岡高裁宮崎支部で、宮崎市の主張、つまりその者が暴力団と関係のあるということで生活保護を打ち切るという判断が示されております。
非常に難しい問題ではございますけれども、今後とも、これは各自治体そして各警察において取り組んでいかなければいけないものだと思います。
また、貧困ビジネスに関しましては、これは囲い込みという言葉がありますように、実態としてございます。これがいわゆる暴力団の資金源になっているかどうかというのはなかなか、立件事案が少のうございますのでその実態は分かりませんけれども、しかし、全く暴力団と関係のない一般の方がこのような囲い込みビジネスというものを果たして行うであろうかということを考えると、やはり暴力団の関与が強く疑われるのは事実だと考えております。
違法ドラッグ・ハーブですけれども、非常に社会的な問題となっておりますけれども、やはり覚醒剤を始めとして違法薬物を暴力団がシノギにするというのはもう昔から行っておるところでございますので、昨今問題となっておりますこの違法ドラッグ・ハーブにつきましても暴力団の関与が強く疑われるのではないかというふうに考えております。
以上です。
○委員長(芝博一君) ありがとうございました。
それじゃ、小林参考人、お願いいたします。
○参考人(小林節君) 生活保護費の法的性質の話なんですけれども、ちょっと周りの話になって恐縮ですが、日本国憲法では国民を主権者と決めている、国のあるじ。そして、二十八条で勤労の義務を課して、自分で働いて自分で稼いで納税して、納税の義務、国と家族を支えなさいと書いてある。そして、憲法二十九条で、資本主義国家である、つまり財産権の自由を保障している。二十二条で職業選択、営業の自由を保障している。こういう前提である以上、やはり自分の生活は第一次的には自分で賄う。
ところが、世の中には運、不運もありますから、何か戦いに負けてしまった場合、これは自由の結果で、じゃ、飢えて死になさいというのは余りにも切ないので、人間である以上、敗者復活する努力の過程、国が面倒見てあげよう。つまり、生存権というのは二次的権利であるというのが標準的見解であると思うんですね。
幾つか自分の選択肢の中に、あっ、これもある、福祉事務所に行けば金くれるんだって、俺困っているから、そういうのりで持ち込んでいいものではないということを申し上げておきます。
それから、共謀罪につきましては、あれはもうふざけた話で、法学的には、何か酒場のカウンターであいつ気に入らねえ、やっちまおうかと言っただけで捕まっちゃうわけでありまして、いや、本当に、冗談みたいな話だけど、本当そういうわけで、やっぱり法学的には共謀罪などというのはあり得ない話で、実際に人間の行動に出たときに打つという意味では参加罪というお考えは誠にもっともだと思います。
以上です。
○はたともこ君 もしよろしけば、北橋参考人にも違法ドラッグについて、脱法ハーブについて御意見があれば伺いたいと思いますが。
○委員長(芝博一君) それでは、北橋参考人。
○参考人(北橋健治君) よく覚醒剤でありますとかあるいはシンナーということで、暴力団が活動資金にしているということは、これまでも摘発され、我々も当局と一緒になって対応しているわけですけれども、最近の新しいタイプにつきましても情報としては耳にいたしますけれども、基本的には県警察と自治体が緊密に連携を取り合って対処していくということの中での情報しか持ち合わせておりません。
○はたともこ君 終わります。ありがとうございました。
○委員長(芝博一君) 以上、はたともこ君の質疑を終了いたします。
続きまして、松村龍二君。
○松村龍二君 今日はどうも御苦労さまでございます。
実は私、昭和三十六年に警察庁から大阪府警に勤務しまして、暴力団の対立抗争が大変激しい時期の大阪にいたことがあるんですけれども、その大阪でもいわゆるドスでお互いを殺し合うと、また報復として散弾銃を撃ち込むと、あるいは拳銃が、小銃が使われるといったことであったわけですけれども、今回の福岡の例を見ますと、北九州市の例を見ますと、数年にわたって手りゅう弾ですか、手りゅう弾が使われていると。ちょっとその大阪の経験からしても、考えも付かないような凶暴な武器が使われていると。
それから、現職の警察官に対して刃向かうと、抵抗する、刃物を持って、凶器を持って刃向かうということはなかったわけですけれども、今回、四月に警察のOBでセンターに勤務している方に対して拳銃を撃ち込むと、瀕死の重傷を負わせるというような事件があったわけです。
そういう意味において、驚きを禁じ得ないわけですが、ここまで来ますと、日本の暴力団というものが非合法化、暴力団の存在そのものが合法ではないというふうにすることも検討されていいのではないかなと。過去の警察の歴史においても、時折、警察庁長官とか刑事局長というような立場の方が非合法化してみたらどうかというようなことを、そういうことで動いておられたということを聞いたこともあるわけですけれども、なかなか非合法化というのは問題が、今具体的な検討の段階には上らないわけですが。
北橋健治先生にまずお伺いするわけですが、今回の法改正を非常に熱心に動かしておられたということで、今回、このような法改正を見るわけでございますが、この法改正によって一応満足するような状況になったというふうにお考えなのか、まだこの点が不十分であるというふうにお考えなのかお伺いします。
また、先ほどから申しております暴力団を非合法化するということについてどのような御意見をお持ちかお聞かせいただきたいと思います。
○委員長(芝博一君) じゃ、まず北橋参考人。
○参考人(北橋健治君) 先ほど、福岡県、北九州市、福岡市、県の公安委員長の四者で議論を重ねまして、そして暴力団から市民生活を守るための要望書を政府に提出したと申し上げたのでありますが、その中で最初に書かれているのがこの暴対法の改正でございます。それは有益なことだというふうに私ども思っておりますが、しかし、非常に巧妙な手口で活動を展開している状況を考えますと、私ども地元自治体の気持ちといたしましては、それは重要な一環ではあるけれども、さらに対応をしっかりとすべきであるというように思っております。
その一つは、果たして現在の捜査手段というもので、この現在の市民を狙うような、そういう暴力団の対策で十分であろうかと。やっぱり新たな捜査手法の開発というのが欠かせぬのではないかと自治体としてもそういうように思います。
それからもう一つは、国民は皆納税の義務を負います。そして所得を隠したり不正なことをしますと、国税庁、税務署から厳しく指弾を受けるわけでございます。そういった意味で、その暴力団の所得というものについて、調査はされているとは思いますけれども、いま一度、その調査、徴収の徹底というものが必要ではないかと、そのように思います。
それから、自治体はあらゆる業務について、全ての業務について暴力団を排除する規定を設けております。それに対して、各省庁、国がそれぞれの事務、許認可事務を全部見直しをして、そういった規定を置いているかどうかという問題であります。
そういったことを総合的に対応する必要があって、その第一歩として今回の法案を評価をしているところでございます。
○松村龍二君 どうもありがとうございます。
欧米においては、非常に日本にない捜査手法でいろいろ捜査が行われているということで、新たな捜査手法についての言及は大変力強い御意見であろうかというふうに思います。是非これを、まあ口では新しい捜査手法と国家公安委員長とか法務大臣とか、そういう方も言われるんですけれども、それじゃ具体的にそういうことを実現する動きがあるかというと、なかなかそこまで行っていないという感じがいたしますので、今後ともそのような御意見を主張いただき、共に協力してそのような日が実現することを期したいというふうに存ずる次第です。
次、疋田先生にお伺いするわけですが、民事介入暴力のお仕事を長らくしておられたということで、大変な御苦労を重ねられたというふうに思います。先生の発言の中から、このような捜査手法がやむを得ない、当然であるというふうな御発言がいろいろ得たわけでございますが、この問題、この法律が検討の段階に上がってから、学者とか言論人とかそういう方から、あるいは暴力団の人からこの法律は憲法違反であるというふうな言論がなかなかかまびすしいわけですけれども、先生自身からそのような御意向は全くなかったということでございますが、先生は、これが憲法違反だというような発言に対しましてどのようなお考えをお持ちですか、お伺いします。
○参考人(疋田淳君) 憲法学者の先生を隣に置いて、ちょっと申し上げにくいのではございますけれども、一部言われているところの憲法違反というのは、いろんな観点でおっしゃっているのかも分かりませんが、例えば暴力団員であるがゆえに身分による差別、憲法十四条、じゃないのかというような御視点も確かにございますけれども、これは身分ではございません。身分というのは、自らの意思ではどうしようもない属性をもって身分と言うわけですから。暴力団員というのは、自らの意思で暴力団に加入しているわけです。したがいまして、暴力団員には暴力団を離脱する自由があります。それを自らの意思で暴力団を離脱しないで他人の人権、生命、命を狙う、そのような人たちが人権保障されるということはあり得ない。
また、これは公営住宅からの暴力団員の排除に関して争われた事件が広島でございますけれども、そのときの広島地裁、広島高裁、そしてこれは最高裁判所でも認容されましたけれども、暴力団員であることをもって公営住宅から排除するということは身分による差別ではないというふうに裁判上でもはっきりと認定されております。
ですので、本件、暴対法等に関しましては憲法違反の問題は一切発生しないというふうに考えております。
○松村龍二君 次、小林先生にお伺いいたしますが、イタリアにおいてはマフィアというのが、それからアメリカも関係しますか、非合法化されているというふうに伺うわけですが、また、先般、日本の暴力団がアメリカへ旅行で行きましたときに、入管、税関で財産を差し押さえられたというようなことがあったやに聞くわけですが、日本も、先ほどの第一問の北橋先生に対する質問と同じでございますが、暴力団を非合法化することについて、小林先生、どのようにお考えかお聞かせいただきたいと思います。
○参考人(小林節君) 結論は、現時点では賛成せざるを得ないと思います。理由は、事実関係の問題だと思います。
任侠団体任侠団体といいますけど、そうではなくて、要は高度に訓練された犯罪を目的にして特化された団体という事実関係が最近あるように見えるんですね。だから、要するに憲法上、例えば盗聴がいけないとかおとりがいけないとかいいますけれども、それは普通の魔が差した犯罪人に対する話でありまして、犯罪を目的として特化されて、お仕事何やっているの、ゆすり、たかり以外何もやっていませんという組織であることが認定された、それは今の憲法の下で反社会的ですから、居場所ないですよ。だから、そういうものは許さないということは法的に、憲法的に可能であると思います。事実認識の問題だと思う。確認が必要だと思います。
○松村龍二君 終わります。ありがとうございました。
○委員長(芝博一君) 以上をもって松村龍二君の質疑を終了いたします。
次に、浜田昌良君。
○浜田昌良君 公明党の浜田昌良でございます。
本日は三人の参考人の皆様、貴重な御意見ありがとうございます。
最初に、疋田参考人にお聞きしたいと思います。
私はこの法改正、必要だと思っておりますけれども、これに反対又は慎重という御意見の方もおられます。先般、その方々が参議院の議員会館で会合も開かれました。そのときに、日弁連の刑事法制委員会の事務局長の山下さんが出席されましてこういう発言を、まあ新聞にも報道されていますので御存じかもしれません。今回のいわゆる特定抗争指定暴力団又は特定危険指定暴力団の指定が行為のおそれという、そういうのが条件になっていると。それによって、予測が根拠とされており、恣意的な運用がなされる危険があるとおっしゃっていまして、行き過ぎた団体規制が可能になり、憲法で定めた基本的人権の結社の自由を侵害をするおそれがあると危ぶむという、私は余りないと思うんですが、こういう御意見を言われています。将来的には反社会的勢力と当局に見られる政治団体などにも適用されるおそれがあるという、こういう新聞紙上ですね、意見を言われていると。この点についてどう思われるかが一点でございます。
ほかの方についても最初に質問させていただきますが、続きまして小林参考人にお聞きしたいと思っておりますが、先ほど小林参考人から、今回の法案について、内容もおおむね正当であるという話もございましたが、疑問が残るという点の一点目でございますけれども、今回の法案で企業側の暴力団排除努力義務というのが置かれると。そのときに、参考人おっしゃったようないわゆる善意の第三者がいわゆる風評被害を受けないかという問題でありまして、これについては、参考人から、その際の速やかな救済手続の完備も不可欠であるとおっしゃっていますが、例えばどういうもののイメージがあり得るのか、もう少しこれをお話しいただきたいと思います。
続きまして北橋参考人、またもしお時間ありましたら疋田参考人又は小林参考人にもお聞きしたいと思ったんですが、これ何かといいますと、今回の法律で、いわゆる事務所差止め訴訟につきましては適格団体が住民の委託を受けてできると。一歩前進だと思っています。これにつきましては、疋田参考人ございましたように、昭和六十二年から各地で行われています。住民が自分たちを守っていくために必要なこととしてやっているんですが、この裁判の在り方なんですね。これについては先般、福岡地裁の久留米支部がいわゆる口頭弁論の在り方について住民の方から、いわゆる別室のビデオリンク方式なりつい立てを置いてほしいと。いわゆる被告人との間にそういうことをしないとやはり怖いと。実際、誰が逆にこの口頭弁論に立ってもらうかという人選も大変だったようでございますけれども、これについて福岡地裁の久留米支部が認めないということで、二回も口頭弁論が行われています。
これについて、そういう手法が、まあ三権分立ではありますけれども、司法の判断でありますが、一国民としてどのように感じておられるのかについて、それぞれ、北橋参考人から、もしお時間がございましたら、疋田参考人、小林参考人に承れればと思います。
私からの質問は以上でございますので、疋田参考人、小林参考人、北橋参考人の順番でお答えいただければと思います。
○委員長(芝博一君) それでは、質問に従いまして、疋田参考人の方からお願いいたします。
○参考人(疋田淳君) まず、結社の自由云々の議論ではございますが、確かに反社会的勢力という言葉が、主に暴排条項であるとか暴排条例、全国四十七都道府県で制定されましたが、これにおいて用いられていることから、一部の方たちが、それがいわゆる非定型なもので、どんどんどんどん拡大するんではないかという一部批判といいますかをされております。
しかしながら、本暴対法に関しましては、指定要件という極めて厳格な指定要件制度の下でまず暴力団を指定する、その暴力団の中から特定危険指定暴力団、そして特定抗争指定暴力団という形の構造を取っております。したがいまして、それが例えばNPOであるとか労働組合であるとかそういうところまでに広がるというおそれは全くないというふうに考えておりますので、この点に関する問題点はないというふうに考えております。
適格団体にちょっとだけ触れさせていただきますと、実は私も道仁会訴訟の弁護団の一員でございます。ですので、この訴訟は非常に苦労しております。
その中で、御指摘にありましたように、久留米支部の裁判官がいわゆるビデオリンク方式による原告住民の取調べを拒否したという点に関しては大変遺憾に思っております。やはり、皆さんも考えていただければ分かるんですが、実際、法廷に出て隣に暴力団組長が座っている状況の中で、果たして一般市民の方がどういう精神状態の中で証言できるかと考えたときに、これはビデオリンクという手続規定がきちんとございますから、このビデオリンクで、別室でビデオリンクによって調べるという手続を当然取るべきだと思います。
久留米の事件では、遮蔽措置という形で傍聴席との間の遮蔽措置はとりましたけれども、実際、久留米の事件の道仁会は組長本人が弁護士と一緒に当事者席に座っているわけですので、住民が証言をするときに真横に暴力団組長がおるという、そのような異常な状況の中でされておるということから考えますと、これはもちろん個々の裁判所の裁判官の訴訟指揮に属することではありますが、現行法でも私はビデオリンク方式、遮蔽措置は全てこのような暴力団関係訴訟では適用できるというふうに考えておりますので、これは是非とも裁判所に対してはその方向で取り組んでいただきたいと、そういうふうに思っております。
○委員長(芝博一君) 続きまして、小林参考人、お願いいたします。
○参考人(小林節君) 他団体へ適用されるおそれは、今、疋田先生のおっしゃったとおりです。
それから、善意の第三者が巻き込まれた場合の手続については、私のイメージとしては、公安委員会がその団体を指定したりするわけですから、公安委員会に善意の第三者が、私、善意の第三者でしょうと申し立てて公式に認定してもらう、そういうヒアリングの手続、規定を法律の中に入れておけば制度はできるんではないか。
それから、さっきのつい立ての件ですけれども、三権分立とおっしゃいましたけれども、ですから、現行法でも私はできると思いますので、弁護団の頑張りも一つですけれども、裁判官によって適用にばらつきがあるんであれば、それこそ三権分立ですから、立法府でこういう場合はこうしますと書いてしまえばいいんです、法律に。そうすれば裁判官によって裁量できなくなるじゃないですか。これは、国権の最高機関ですから国会でなさったらいかがかと思います。
○委員長(芝博一君) 続いて、北橋参考人。
○参考人(北橋健治君) 二年前に、県の暴排条例の直前に駆け込みで小学校と幼稚園の前に暴力団組事務所の看板が掛かったと、それを外すためにみんなが立ち上がったときに、自治会のリーダーの家に何発も銃弾を水平に撃ち込んだという、そこで市民は覚悟を決めて、安全、安心のために立ち上がろうと決意して一年掛かりでようやく撤去させたという運動を御紹介申し上げました。
私もそのとき脅迫状を一通受け取った一人でございます。みんなと一緒に一年間頑張ってみて、平穏な生活の中で頑張っていらっしゃる地域住民の方が、拳銃発砲事件のような凶悪犯罪で裁判所に出るときに一体どんな思いになるだろうかと。裁判所、裁判官は、これまではビデオリンク方式などで従来やってきたと聞いておるんですけれども、そのやっぱり地域住民の、普通の市民の気持ち、感性というものをどうして理解してもらえないんだろうかと、私は大変今回の対応は、裁判所の対応は残念でなりません。
○浜田昌良君 もう時間で終わりますが、今日いただいた御意見をしっかり踏まえて今後の審議をしたいと思います。
終わります。
○委員長(芝博一君) 以上、浜田昌良君の質疑を終了いたします。
次に、江口克彦君。
○江口克彦君 みんなの党の江口克彦です。
本日は、お忙しいところ、また遠いところからおいでいただいたり、いろいろと有益なお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。
まず北橋市長にお伺いしたいんですけど、この法案で暴力団対策の法整備が大幅に私は進むと思うんですけれども、更に暴力団対策をより万全にするにはどのようなことが必要なのか、実際に、今のお話ではありませんけれども、暴力団と向かい合ってと言っていいほどそういう毎日を過ごしておられると思いますので、どのようなことが必要なのか、ちょっとお伺いをしたいということであります。
それからもう一つ、ちょっと外れるかもしれませんけれども、暴走族OBや外国人の犯罪組織など暴力団以外の反社会的勢力に対しどのような対策を講じていくべきかということを、北橋市長、ちょっとお考えがあればお伺いしたいということであります。
それから、疋田先生と小林先生にお伺いしたいのは、この改正法案が、憲法違反の団体規制に踏み込んでおると、また、警察権限の肥大化を招く危険性が極めて強いというようなことを言う方もおいでのようです。これは、法案には、不当要求による被害防止のために必要な措置を講じるよう企業に求める規定がありまして、そうなってくると、企業の方もそういう情報を得るためには警察OBを入れないと対応できないんじゃないかと。そうなってくると、また警察OBの天下り先を押し付けるという、こういう内容にもなっているんじゃないかというようなことを言う方もおいでなんですけれども、この件に関して、両先生の御意見をいただければと思います。
私の質問は以上です。
○委員長(芝博一君) それでは、まず北橋参考人、お願いいたします。
○参考人(北橋健治君) 平成二十三年で発砲事件は十八件、手りゅう弾事件は六件でした。そして、平成二十四年、発砲事件は三件、手りゅう弾事件は一件です。ほとんどが未解決でございます。この暴力団犯罪を考えるときに、県民、市民の切なる願いは、一日も早く容疑者を検挙してほしいということだと思います。検挙することがこの暴力団による発砲事件を抑止することにつながると多くの県民は感じております。
そういう意味からいたしますと、今回の暴対法改正は有力な大きな前進であると考えますが、やはり、新たな捜査手法というのはこれは憲法上の問題もあろうかと思います。いろいろと難しい論点はあると思うんですが、現実問題として、捜査の現場にもう一度国会の先生方に注目をしていただきまして、どうすればこの容疑者を検挙していけるかという、それはやはり、僕は捜査手法の検討ということは避けられないと思っております。
それから、税のお話を申し上げましたけれども、やはり税、所得という立場から健全性を確保するといいますか、それは暴力団に対してのみならず重要なことでございますので、暴力団に対してもきちんとやってほしいというのが福岡県、私ども自治体の共通の思いでございます。
そして、先生から今、青少年の対応でどうかというお考えでございましたが、実は、教育現場で、暴力団犯罪はいけないという教育というのは正面切ってはやってきませんでした。しかし、福岡県の暴力団排除条例、また、それぞれの自治体が市の条例を作りまして、以降、教育委員会におきましても、中学生や高校生の場でいろんな体験談を踏まえて子供たちに暴力団というのに加入しないように教育が始まっております。そのことは一定の手ごたえを教育現場では感じているということでございますので、一層努力をしたいと思っております。
○委員長(芝博一君) 続きまして、疋田参考人、お願いいたします。
○参考人(疋田淳君) 団体規制に踏み込むのではないかという御質問ですけれども、これはやはり法文をよく読んでいただいたら分かりますとおり、全て行為規制という観点から、今回の暴対法、以前の暴対法も全てそのような取組をしております。
暴力団そのものを非合法化する必要があるかどうかということに関しましてはたくさんの議論がありますし、実際問題、非合法化した場合に、それがどういう形で今後実効性のある形で対応できるかという問題も実はありますので、この点に関しては、やっぱり慎重な判断、一足飛びに団体規制、非合法化ということは私自身も考えてはおりません。
また、これも一部の方から批判されております、警察官僚の天下りじゃないのかということでございますけれども、事業者に対する責務規定というのは、先ほど申しましたように、あくまでもこれは努力規定として事業者に対して求めているわけです。また、事業者も社会の一員である以上、この暴力団を排除するということに関しては同じ位置にあると思うんです。
したがいまして、努力義務という形で今回入れるということに関しては問題ありませんし、またそうなると、今委員御指摘のように、情報を取るために警察OBを入れなきゃならないんじゃないかという御指摘ですけれども、これは昨年十二月、警察庁の方から既に暴力団情報の外部通達に関する通達が、新しい通達が出ております。今までのような、警察はいわゆる求められたら情報を発信するというのを、これを百八十度転換して、自ら積極的に企業、市民に対して暴力団情報を発出すると、こういう取組をしております。ですので、いわゆるOBを入れないから情報が取れないと、そういうようなことはありません。こういう正しい運用をされたら、また暴追センターでもそのような運用をしております。
そういうことで、OBを入れなければ情報が取れないというような制度設計にはなっておりませんので、この点の批判も当たらないんじゃないかというふうに考えております。
○委員長(芝博一君) 同じ質問で、小林参考人、お願いいたします。
○参考人(小林節君) 今回の法律、非常に細かいので読むのに苦労しましたけど、今、疋田先生おっしゃったとおり、行為規制、団体規制ではないと思います。
と同時に、これ理論の問題ですけど、日本国憲法の下で反憲法的団体は存在は許されない。つまり、反憲法的団体を結社の自由で保護する理由はない。これはドイツやアメリカの確立された判例ですから、要するに事実認定の問題です。それが反国家的団体であるという認定がきちんとできる限り、それはあり得ると思います。
それから、警察権力の拡大、警察利権の肥大化という議論もよく聞くんですけど、それは必要に応じて警察に権限を、要は、何というかな、警察権力の肥大化は必要だから起きているので、その肥大化を招いた人にそんな批判はされたくないわという議論なんですけれども、それから、警察OBだって死ぬまでは生きているわけですから、人材として活用される場があればそれはそれでいいじゃないですかと私は思います。
以上です。
○江口克彦君 ありがとうございました。
○委員長(芝博一君) それでは、以上をもって江口克彦君の質疑を終了いたします。
次に、糸数慶子君。
○糸数慶子君 無所属の糸数慶子です。
今日は、本当に貴重な御意見を賜りまして、お忙しい中、三参考人に、改めまして、限られた時間ではございますが、御質問させていただきたいと思います。
まず、この暴排条例で禁止されている暴力団への利益供与について、どこまでが利益供与に当たるか戸惑う企業が多いというふうに聞いておりますが、企業の戸惑いに限らず、条例の課題に直面したこと、それからこの条例の問題点についてどのように考えるか、改めて御三方にまず一番目にお伺いします。
次に、疋田、小林両参考人にお伺いしたいと思いますが、本法案におきまして、国家公安委員会による指定を受けた都道府県暴力団追放運動推進センターが、周辺住民に代わり暴力団事務所の使用差止めを請求できることとする制度が新設されていますが、日弁連会長は、人格権という一身専属的権利を任意的訴訟担当という制度により援護し得るかという疑問があるというその理由をおっしゃっており、この制度の導入について慎重を要するという声明を出しています。都道府県センターによる暴力団事務所使用差止め請求の制度についてのお考え、それをお二方にお伺いいたします。
そして、三点目、最後でございますけれども、これは御三方にお伺いいたしますが、暴力団から離脱した人への対応についてであります。暴力団を解体するためには、暴力団への規制強化だけでなく、暴力団から離脱した人又は離脱する意志を有する人へのケアも必要ではないかと考えますが、この法律におきましては、第二十八条に離脱の意志を有する者に対する援護等についての規定が定められておりますが、このような人への施策の現状や問題点、それを国に求めること等についての考えはおありかどうか、お伺いいたします。
以上お伺いいたします。
○委員長(芝博一君) それじゃ、以上三点の質問でございますが、それぞれ順番にお願いいたします。
まず、北橋参考人。
○参考人(北橋健治君) 質問の趣旨をどれだけ理解しているかでありますが、利益供与の問題でありますけれども、自治体は、例えば市営住宅に入っている方には、暴力団組員をやめるか、あるいは出ていただくかということを一人一人やっているんですけれども、そのリストを直接持っているわけではないわけですね。やはり、情報というのは、この実態を承知されている県警察当局と連携を取ることによって、私たちが条例で定めた暴力団排除ということをしっかりと行うという手順でございます。
そういった意味では、暴力団にお金を出さない、暴力団を利用しない、暴力団を恐れないという、三ない主義と呼んで市民を挙げて暴追運動を展開しているわけでございますが、具体的にそういった密接交際の事実が指摘されるとか、そういった場合には指名停止といった処分を行うわけでございますが、福岡県警察と連携を密にいたしまして条例に沿って適切に事務を進めているところでございます。
離脱された元組員に対するケアをどうするかというのは、非常に重要な問題提起だと受け止めます。実際、私どもは市営住宅に入っていらっしゃる方一人一人に組を抜けていただけないかというお話をしていくわけなんですけれども、なかなかうまくいかないことも多々あるわけです。これは、県知事を始め関係者でよく行政同士で話をするんですが、やっぱり暴力団をやめた後に、それから職を得て生活をしていけるようなケア、配慮というのは大事な課題だというふうに認識を持っております。
北九州市は、実は法務省の、刑務所を出られた方の社会復帰を助ける公的施設を日本で初めて受け入れた地域でございまして、実は非行少年もそうなんですけれども、立ち直りを支えていこうという市民団体は非常に強く市民社会に根付いております。したがいまして、そういった方、やはり経営者の方の御理解もいただかないと就職口が見付かりませんので、そういった非常に温かいお気持ちを持って更生を手助けする方々もいますので、今日の先生の問題提起を受けまして、改めて、帰りまして、そういった経営者の方々との連携も考えながら、ケアの問題も具体化をしていきたいと思います。
○委員長(芝博一君) 続きまして、疋田参考人お願いいたします。
○参考人(疋田淳君) 利益供与の問題でございますけれども、これは本法、暴対法の問題ではなくて、暴排条例上の事業者に対する利益供与禁止という問題だろうと思いますけれども、今現在各都道府県で条例が運用されています。その中で、告発案件、公表案件、多々出てきております。何が利益供与で何が利益供与ではないのか。つまり、例えば本当に小さな店舗の方が、たまたま来たお客さんに対して、あなた暴力団ですかというふうなことを本当にできるんですかというふうなことがありますけれども、これはやはり条例等をよく読んでいただいたら分かりますように、あくまでもできないことを事業者に対して求めているわけではありません。暴力団員であることを知って、そしてその行う取引行為がその暴力団の威力を助長するという、そういうことがあって初めて利益供与違反となるわけですので、必ずしも事業者に対して過度なものを与えているというふうには思いませんし、今後、実例やまた都道府県のQアンドA等で事業者に対してこういう事例が利益供与になりますよということを積極的に発出していけば、おのずと分かっていただけるのではないかというふうに思います。
適格団体のいわゆる任意的訴訟担当という問題に関しましては、これは言わば一身専属的なものであってなじまないというような見解を実は私ども日弁連の方は出しておりますけれども、この点に関しましては、既に民事訴訟法学者において、一身専属的なものであっても、これはこのような団体訴訟に、いわゆる授権団体という形で行うことは可能であるという、いわゆる法理論的な問題点はクリアされているというふうに私どもも理解しております。
最後に、離脱支援でございますが、これはやはり何よりも経済状況が一番大きな背景にあることかと思いますので、やはり経済状況をきちっと好転させ、そして本人の強い意思の下に、行政を含めて、地域含めて支援していくということが必要だと思います。我々、日弁連民暴委員会もこの離脱者支援というのは非常に大事なものだと考えておりますので、今後とも研究をして行政と一緒に対応していきたいというふうに考えております。
○委員長(芝博一君) 続きまして、小林参考人、お願いいたします。
○参考人(小林節君) 条例が全国的に完備したとき、私は印象として、ちょっとこれやり過ぎかなと思ったんですけれども、ただ、何というか、排除しなきゃならない危険が現にそこにあるという実態からしますと、国家として強い意思を示すことに意味があったんだと思うんですね。ですから、あとは現場での試行錯誤の中で徐々に出っ張りやへっこみを直していく、もう今回の法改正もそうですけど、そういうことの繰り返しで完成されていくもので、流れとしては私は賛成、今はしております。
それから、例の訴訟の代理の問題ですけど、これもう民訴だという、こう決め付けなくたって私いいと思うんです。つまり、守っているものは個々の個人の人格権と言うから弁護士立てなきゃと、それもしかも制度として弁護士使うことになっていますし、これは言わば刑事訴訟ではないとしても行政訴訟、つまり公益の代言人がいていいと思うんですね。これはもう地域社会の安全という、個人を超えた公益を守るための戦いで、それのために個人が民訴の形で矢面に立って弾ぶち込まれたりするのは理不尽ですから、公権力が盾で入るという。
つまり、中間形態の訴訟が始まったと思えば理解できるわけで、既存の民事訴訟法という枠だけではなくて、民事訴訟と行政訴訟と刑事訴訟の中間地帯が生まれた。そこにはむしろ、だって刑事訴訟だって、被害者が訴えずに、被害者に代わって勾留権代表の検察官が訴えてくれる、だから被害者、関係者は安全なわけでありますから。
そういう、時代の中で変化した訴訟形態と御認識なさればいいんではないでしょうか。それを国会がそう決めてしまえば、それでいいわけでありますから。これ自体、憲法違反でも何でもないと思います。
それから、離脱者の、暴力団離脱者のケアの問題は私にとって一番触れてはならぬ、つまり、お付き合いはまずないし、それから行政経験もないですから、一番私は答える能力を持っておりませんので、これは下手なことを言って失礼になってもいけませんので、返答を辞退させていただきます。済みません。
○糸数慶子君 終わります。
○委員長(芝博一君) 以上をもって糸数慶子君の質疑を終了いたします。
以上で参考人に対する質疑は終了をいたしました。
参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただき誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
それでは、本日はこれにて散会といたします。
午前十一時三十分散会