国政における報告(有識者、表現者、弁護士等)1

暴力団対策法の一部改正に関する会長声明

2012年(平成24年)1月5日、「暴力団対策に関する有識者会議報告書」が公表され、政府は、この報告書に沿った内容で第180回通常国会に「暴力団による不当な行為の防止に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「改正案」という。)を提出予定とのことである。
当連合会は、暴力団及び暴力団員による一般市民、事業者を巻き込んだ対立抗争が激化していることや暴力団が組織実態を隠蔽して潜在化し、周辺者等を利用して資金獲得活動等を拡大していることを深く憂慮し、一般市民や事業者の生命、身体、生活の平穏を守るために立法的な措置が必要であると認識している。
他方、当連合会は、従来からかかる暴力団規制立法については、①暴力団及び暴力団員のみに対する規制であって、その他の団体、市民に規制が及ぶおそれがないこと、②基本的人権を違法・不当に侵害するおそれのないこと、③効果が見込まれ、期待される立法であること、④市民の支持を受けるものであって、市民自らが暴力団追放に立ち上がることを推進する効果を持つものであること、が必要であるとの意見を述べてきたものであり、今回の改正案についてもこれらの観点から吟味されなければならない。
上記①②の観点からは、改正案の企図する、それ自体ただちに違法とはいえない行為類型の規制については、その要件を明確にするとともに、暴力的要求行為性がより明確、具体的に認定されて初めて適用されるよう、適正手続きに配慮した条文とすることが必要である。
さらに③④の観点から、改正案において提案されている適格団体(都道府県の暴力追放運動推進センターを想定)による暴力団事務所使用差し止め請求制度の導入については慎重な検討が必要である。
この点、改正案においては、適格団体が暴力団事務所の周辺住民の人格権を任意的訴訟担当の手法により委任をうけて行使して事務所の使用差し止めを請求することを認めることとしている。しかしながら、人格権という一身専属的権利を任意的訴訟担当という制度により授権しうるかという疑問があるうえ、訴訟物が授権住民の人格権である以上、訴訟中に相手方当事者である暴力団に誰がかかる授権をしたかを明らかにせざるを得ず、周辺住民が自ら当事者となることの恐怖感を払拭することができないおそれがある。このように必ずしも十分な効果が見込めないにもかかわらず、民事訴訟法上も例外的であり、場合によっては弁護士法の弁護士代理の原則の潜脱ともなりかねない任意的訴訟担当という制度を導入することについては慎重であるべきである。
当連合会としては、暴力団事務所の周辺住民が抗争等により生命・身体・生活の平穏等が害されることを防止するために暴力団事務所の実効的な使用差し止め制度を構築する必要性は認めるところであるが、適格団体に固有の権利として使用差し止め請求権を認める法制度との比較検討、消費者団体訴訟制度等の他の法制度との権衡、制度を導入した場合に暴力団事務所の使用差し止め以外の場合への類推の可能性、適格団体の業務の適正(管理監督体制、報酬等)の確保の方策等、なお十分な議論がなされていない点がある。
以上のとおりであるから、当連合会としては、今回の改正案の立法目的である、一般市民、事業者を暴力団抗争の被害から実効的に防衛するために必要な規制の導入には賛成するが、上記のとおり、なお慎重な検討を要する点があることを指摘するものである。
なお、今後も引き続き効果的な暴力団対策について多角的に検討されるべきである。

2012年(平成24年)2月15日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児

日弁連ホームページより抜粋

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