厚生労働省が、今年の三月、全国の福祉事務所に、警察官OBを積極的に配置するように指示した。
これに対して、生活保護問題対策全国会議と全国公的扶助研究会は、連盟で厚生労働大臣に
「全国自治体福祉事務所への元警察官天下り配置の撤廃を求める」という要望書を提出した。
要望書の趣旨は、74の自治体が福祉事務所に元警察官を天下り配置しているが、
生活保護受給者に罵倒する事案も発生しており、相談者への威圧が懸念される事態になっている。
困窮状態にある個人や家庭を支える、医療福祉の現場に関わるものとして、
ここに深い違和感と強い怒りを表明し、この天下りを速やかに撤廃せよ、というものである。
要望書の内容はともかくとして、国の財政が大きな問題となっている中で、政府は何を考えているのだろうか?
官僚たちの操り人形となっている現政権に期待はしていないが、この天下りは納得できるものではない。
元警官を雇用している74自治体(雇用数116人)は国からの補助金によるものだが、実際には自治体独自の予算で雇用されている事実もあり
116を大きく上回っている。
警察の怠慢で起こった犯罪は毎年増加し、不祥事も後を絶たない。
警官の天下りを斡旋する前に、警察自体の体質を改善することのほうが先決である。
国会では連日、消費税増税の問題が大きく取上げられているが、こうした補助金についての議論がなされていない。
ギリシャ危機は日本にとっての良い参考例だ。
公務員天国が原因の破綻である。
我々国民は、官僚をしっかり監視しなければならない。
今回のこの天下りは、精神科における医療観察法が、酷似しているらしい。
小泉首相時代、凶行事件の加害者に精神疾患があり、「野放し」とマスコミは騒いだ。
実際は精神科患者の犯罪率は一般より低いのに、刑務所医療の貧困や、刑法39条の是非や、犯罪の疾患因性や再犯の予測困難等の検討は棚上げし、
「保安処分」として医療観察法が制定されたのである。
この天下りを反対する者のサイトに、
<僅かな「触法精神障害者」対策への莫大な「ハコモノ」建設費と人件費のため、一般精神科福祉予算は削られ、社会的入院をなくし地域生活を支える体制は遅れたままです。
精神科患者は「潜在的犯罪者」で、「病を利用し刑を不正に免れる」という差別観を残し……。本来、十分なメンタルヘルスが一般の悲惨な事件も防ぐのですが。>
と書かれている。
こうした官庁の斡旋での天下りが、行政改革で問題にしていたのは与党の民主党だった。
しかし、実際に改革は行われず天下りは減ることも無く、利害のために受け入れる企業が多くあるのだ。
警察報道のジャーナリストの寺澤有氏が明らかにした警視庁の天下り先リストによれば、大企業・有名企業を多数含む393もの企業(団体)が天下りを受け入れていたという。
そのリストによると、スネに傷を持つ“問題企業”がズラリと並び、読売新聞など官僚機構を監視すべきマスコミ企業までが天下りを受け入れている。
いずれにしても天下り先の自治体も企業も補助金等の利害が目的だ。
当然、それらは税金である。
しかも、今回のケースのように必要の無い部署に、無駄な経費が使用されるのだ。
また、福祉事務所に天下った元警察官の質も問題になっている。
保護受給者に「虫けら」「やから」などの暴言を吐き問題となっているケースもある。
大阪弁護士会は、元警察官にケースワーカーが行っている、相談や家庭訪問等の業務をしないように要求した。
市民の反発も懸念されている天下りは、早期撤廃すべきである。
投稿者 中尾 直