平成二十三年十二月八日 石川県金沢市に所在する石川護国神社境内のある慰霊碑の前で、一人の大学生が自決した。 腹と頸動脈を自ら切り、古式の切腹作法ととも言える壮絶な死に様だといえる。 大東亜戦争開戦から、七十年というこの日に日章旗を雨に濡らさぬ様、ビニールシートに包み、スーツ姿で腹を十字に切るという行為を現代の我々に想像がつくだろうか? しかも、切腹した場所は、清水澄博士顕彰碑の前である。 清水博士は、慶応四年金沢市の出身であり、憲法学者である。 戦後の新憲法施行に反対し施行の年の昭和二十二年九月二十五日『幽界より国躰護持と皇室安泰、今上陛下の御在位を祈願す』と辞を残し、静岡県熱海にて入水自決をされた方である。 清水博士の碑の前で、大学において安全保障問題ゼミに熱心だった。 彼が、どういう思いで諫死したのか、今となってはわからない。 しかし、一人の青年が、その命を懸けて訴えたかった事を黙視してはならない。 まして、年間三万の人が自殺をすることと、同一視してはならない。 彼の自決に対し、敬意を表したいと思う。 水谷浩樹 |