国会に上程されている暴力団対策法(暴対法)の五回目の改正法案について、弁護士らが「憲法に定められた『結社の自由』を損なう恐れ」を指摘し、反対姿勢を強めている。
平成24年(2012年)6月15日の東京新聞によると十四日に参議院議員会館で開かれた集会で、改正法案に反対している山下幸夫弁護士(日本弁護士連合会刑事法制委員会事務局長)は警察当局の狙いをこう説明した。
改正案で注目されるのは新たな団体規制だ。従来の都道府県公安委員会が定める指定暴力団という規定に加え、同委員会があらためて区悪と判断した組織を「特定抗争指定暴力団」や「特定危険指定暴力団」に指定するとしている。つまり、屋上屋を架す方式だ。
とりわけ、議論を呼んでいるのは「抗争」「危険」それぞれの暴力団に指定する際の規定だ。
「抗争暴力団」は「人の生命または身体に重大な危害が加えられる恐れ」、「危険暴力団」については「さらに反複して同様の暴力行為を行う恐れ」がそれぞれ指定の要件とされている。
ともに「おそれ」という予測が根拠とされており、適用範囲が曖昧で、恣意的な運用がなされる危険がある。
ここが重要な問題であり、先の山下弁護士は「行き過ぎた団体規制が可能になり、憲法の定めた基本的人権の『結社の自由』(二十一条を侵害する恐れがある」と危ぶむ。
そうした団体規制の議論もないまま、法案が可決されそうなことが、一番の問題だ。
将来的には「反社会的勢力」と当局にみられる政治団体などにも適応される恐れがある。」と述べている。
労働組合「東京ユニオン」の高井晃執行委員は「組合の活動家たちも、今回の暴対法の改正に危機感を持っている。法改正は『結社の自由』という根本的権利の制限につながる」と訴える。
海渡雄一弁護士は「法案には、不当要求による被害防止のため、必要な処置を講じるよう企業に求める規定が盛り込まれた。現状でも、法令順守のために警察OBを迎える企業は多い。だが、OBを雇わない場合、暴力団情報がないために、普通の取引をしたつもりが、相手によっては「反社会勢力に協力した」と話す。
実際、昨今の暴力団排除条例により、暴力団系の会社とは知らずに取引したことで、公共事業の指名からはずされた例もあることから、今後こうした団体規制の議論をより広く議論をつくした上での法案でならなければならない。