焼肉屋店主の主張 其の三十

日本でも、コロナワクチンの接種が始まりましたが、世界では、既に70を超える国や地域で接種が始まっていて、少なくとも7種類の新型コロナワクチンが使用されています。
人口に対する接種の割合は、イスラエルが46.1%と最も高く、英国22.5%、米国11.6%、EU3.2%などとなっています。
主要7か国(G7)で見ても、2020年12月から接種が始まっていて、日本が遅くなった背景には、ワクチンに対する考え方や危機管理への意識の違いがあるようです。
臨床試験を自国で行わず、海外でのデーターを持って承認する一部の国もあるそうですが、日本国内では、厚生省十八番の法律に基づいた臨床試験で、日本でも安全性と有効性が確保できるか、慎重に確認を行ったそうです。
政府の分科会のメンバーで、川崎市健康安全研究所の岡部所長は、「遅れによって、国内外での臨床試験の結果に加え、海外で実際に接種が始まった後の効果や副反応の状況を参考にしながら、接種を進められる側面もある。」と医療関係者に有るまじき発言をしています。
接種後の効果や副反応の状況などと、開発メーカーや欧米人を侮辱する事に気付かない無神経さと、リスクマネジメントが出来ない事を、臆面もなく話す厚顔ぶりには、只あきれるばかりです。
世界で事故や事件が起きると、ニュースは、日本人が含まれているか、いないのかを報道します。
この様に日常的に日本人が、犠牲にならなければ良しとする報道姿勢に問題があって、鈍感な日本人を量産しているのです。
政治の無作為、政治家の想像力の欠如により、日本の感染症対策の課題になっていた、ワクチン生産体制の確保が置き去りにされていました。
2009年の新型インフルエンザの流行後に、政府の対策を振り返った報告書でも、当初ワクチン確保が難しかった経験から、「国家の安全保障という観点からも、可及的速やかに、国民全員分のワクチンを確保する為、製造業者を支援し、ワクチン生産体制を強化すべきである。」としていました。
10年の時が経つのに日本政府の姿勢は、海外頼みで、米国のファイザーとモデルナ、英国のアストラゼネカとの間で、ワクチン購入が決まり、6、714億円の支出が閣議決定され、健康被害の責任は、日本側が負うという海外メーカーの条件も丸呑みを強いられていました。
国内で開発の先頭を走る、バイオ製薬企業アンジェスの森下教授は、「国産ワクチンを政府が買い取ると政府が表明すれば、違った交渉が出来たはず」と述べていて、「ワクチンを開発も輸入もできない国は、経済再開の道筋を見いださない。
国の生死をワクチンが握る。
それ程の戦略物資なのに、政府も企業も重要性を理解していない。」
更に「欧米のワクチンを多額の税金で買わされるのは、日本に何か欠けているのか、それは、安全保障政策が根本的に違うからで、米国では、軍が民間と一緒に積み上げて来たものがあって、日本とは全然違う。」と答えています。
米軍は、毎年数千ドルをバイオ企業にばら撒き、平時から多様な様式のワクチンを確保してきていて、臨床試験の第1、2段階位まで進めておけば、パンデミック(世界的大流行)が起きたら種の近い病原体のワクチンを応用して、最短で大量生産が可能な体制を取っていました。
今回の見事なワクチン供給は、科学者の知性の差というより、国家の安全保障投資の差であるようです。
米ソの冷戦終結で、脅威は、核から生物化学兵器に移り、ワクチンの重要性が高まっていました。
1991年の湾岸戦争後、イラクが生物化学兵器を製造していた痕跡が見つかり、1995年には、日本で地下鉄サリン事件が起こっています。
オウム真理教は、1993年に炭疽菌を屋外で実験的にまいていました。
2001年9.11同時多発テロ直後には、炭疽菌を使ったテロで、米国で死者が出ています。
この様な背景により、米国は自らワクチン開発への関与を始め、注目される新技術のRNAやDNAワクチンが出来るのですが、従来のワクチンに比べて、免疫反応が長続きしない可能性がある事で、軍需由来のワクチンは、当面の作戦に間に合う期間だけ免疫反応が一時的に上がればいいと言う発想がある事から、民生用として適しているかが懸念されています。
ワクチン研究は、有事に備える「その時」に向けて必要不可欠な投資で、
現実に死地に兵を送り出し、感染症のリスクにさらしてきた米国は、丸損になる可能性を踏まえても尚、供給体制に資金を投じています。
自国の安全保障を米国に委ねている日本で、政治は、こうした備えへの投資を躊躇するのでしょうか。
新型コロナを含め、繰り返し新興、再興感染症が起きているのに、警戒感は「日本は何とかなるだろう」と維持されません。
自国優先主義が台頭する世界で、同盟国が戦略物資として融通してくれる保証はなく、それで国民を守れるのでしょうか。
備えへの投資は、将来を見据える安全保障に繋がる国家戦略です。
新しいワクチンによる未知の副反応を心配し避ける人も出る中で、ウイルスの根絶の可能性は低いのですが、ワクチンという物資の価値を見定めなければ、対コロナの世界国家間戦略の中で、日本は、備えの欠如に右往左往する愚を繰り返してはなりません。
現実的に考えてワクチンは、万能ではない事を踏まえて、開発を急ぐ為に安全性が犠牲になってはいけないのですが、100%安全なワクチンを望む事は、現時点では無理があるようで、イスラエルの保険機関は、ファイザーのワクチンの予防効果について、「有効性は、93%と推定される」と発表しています。
国産ワクチンの承認を急ぐ事をお願いして終わります。
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