茨城県議会第二定例会報告(暴力団排除条例関連)県議会議員 細谷典男

「茨城県議会第二回定例会が6月4日から15日の日程で行われた。この中で暴力団排除条例関連では議案として警察業務手当の改正、暴力団排除条例の再考を求める請願の二件が審議された。
最終日の採決では1人を除き圧倒的多数で条例は可決、請願は不採択となった。その一人でもあり請願の紹介議員でもある茨城県議会議員 細谷典男氏の見解を転載する」

1.暴力団対策のための警察業務手当拡大に反対

茨城県には職員に給与を支払う以外に各種手当を支払っている。通常の業務以外に特別な技能や困難度などから設定されている。

例えば家畜等取扱手当がある。「家畜伝染病の防疫作業に従事するものが行う家畜伝染病であつて,人体に感染するものとして人事委員会規則で定めるものの防疫作業のうち,家畜の検査,予防注射の実施,病原体に汚染し,若しくは汚染した疑いのある物件の消毒その他の処理又は患畜若しくは疑似患畜の解体検査の業務」に従事した日1日につき290円支払うものである。

解剖作業手当、放射線作業手当なども特殊性、危険・困難性などことから必要性は認められる。

しかし、首をかしげたくなる手当もある。

今定例会で、警察業務手当の対象作業を拡大して手当化を図ろうとしている業務がある。暴力団から市民を保護する警察官に手当を支給しようというものである

昨今凶悪犯罪が多発している。しかしその多くは暴力団が関与したものではない。「普通」とみられている者による悪質な犯罪の事例を挙げることは枚挙にいとまがない。このような中で根拠なく暴力団のみを危険視する差別性が表れている条例改正である。

部分的対応に視野を狭め、より凶悪な犯罪を見逃しかねないことや、事件への対応を鈍らせることになりかねない。要は暴力団といわれている団体よりも凶悪で陰湿なグループ(マフィア)も存在しだしてきたということ、これこそを警戒しなければならない、ということである。暴力団だけ特別に危険視することは実情に即していない。

県議会に上程された議案は最終日(6月15日)に採決されたが私を除いて全員賛成で可決された。下記は本会議での細谷のりおの討論。

【議案80号 職員の特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例に反対する討論】

この条例は、「警察業務手当の対象となる作業に、暴力団等から危害を受ける恐れのある者の身辺警戒又は固定警戒の作業を追加するため」、というものであります。

身辺警護・固定警戒などの危険度合いは、犯罪の主体・内容・警護対象の状況など、総合的に判断されて、なされるべきものであります。暴力団が関与していない、昨今のストーカ犯罪など一層凶悪、狂暴化していることからも、ことさら暴力団だけ特別視する必要はなく、これらは県警の本来業務であり手当化の必要はないものと考えます。

さらに問題は暴力団等として暴力団を離脱したものまで対象としていることであります。暴力団を離脱し、生業を得ようと努力しているものまで、危険視して警戒作業を行い、その手当を支給することは過剰な支払いであります。

以上の理由から警察業務手当の対象拡大に反対致します。

以上

2.暴力団排除条例の再考を求める請願、

県議会第二回定例会に提出される!

第2回定例会には、「暴力団排除条例の再考を求める請願」が提出された。請願者は3月の議会にも「憲法違反の暴力団排除条例の無効決議を求める請願書」を提出しようとしていた。このときは県議会で紹介議員を得ることが出来ず陳情となった。陳情は審議にのぼることもなく議員に配布だけである。

あらたに第二回定例会に同趣旨の請願を提出するということであったので紹介議員となり議会での審議に臨んだ。

請願内容は、暴力団排除条例が憲法違反でありながらこの問題が慎重に審議されていないことから憲法各条文に則して再考することを求めたものである。

今までの茨城県議会における条例制定、施行にかかわる審議内容は以下のとおりである。(抜粋であるが発言は原文)

① 2010.09.13 : 平成22年文教治安常任委員会(条例、制定される)

◯文教治安委員長 ただいま付託案件の質疑ですので,付託案件について質疑がありましたら,お願いします。その中で,予算と,条例と,別記和解ということでございますので,よろしくお願いします。

◯A委員 お疲れさまでございます。議案の方の暴力団排除条例について御質問をさせていただきます。

いろいろな形で暴力団の排除というのは大切な部分になってくると思います。こういう条例を制定されて,一番これから大事なのは,県民にわかりやすく,この条例を制定したことによって,今まで条例がなかったときと条例が制定された今後,どういう効果が具体的にわかりやすくあるのかという部分の説明が大事になってくると思います。今まではこうだったけれども,これからはこの条例が制定されたことによってこういうことができなくなるよと,こういうことは今度こういうふうな形になるよというものをわかりやすく県民に伝えていく必要があると思うんですが,その辺を具体的に教えていただくのと,その辺を県民にどういうふうに知らしめていくかという,この2点についてお伺いいたします。

◯刑事部組織犯罪対策統括官 茨城県内には,松葉会,住吉会,山口組,極東会,稲川会の5つの指定暴力団の傘下組織を含む118組織,約1,650人の構成員を把握しております。この構成員等の数は,全国で12番目に当たる状況でございます。

これらの暴力団は,過去10年間で,42件に及ぶけん銃発砲事件を起こしたり,あるいは不当要求行為を行うなど,暴力団が県民の生活や事業活動に多大な恐怖と不安を与えている現状でございます。

本条例では,こうした現状に対しまして,県民等が暴力団の存在を断固として許さないという決意のもと,暴力団排除活動をより積極的に行う規格となるものであり,特に事業者による暴力団に対する利益供与の禁止,暴力団事務所の設置場所の規制,公共工事その他県の事務事業からの排除措置等を規定しており,暴力団の存在基盤の弱体化に大いに資するものと考えております。

なお,県民への御理解を得るためには,半年間の猶予期間を設けまして,特に建設業経営者,宅地建物取引協会,不動産協会,ホテル旅館業等に対しては説明会を開催するなど,また,あらゆる機会を通じまして,マスコミや各種業界団体の協力を得られるよう実施してまいりたいと考えております。

◯A委員 ありがとうございます。いずれにしても,飲食店関係ですとか,建設業の方々も大変被害をこうむっているとお聞きしておりますし,そういった部分へそういう説明会等々,県民に知らしめるということは非常に大切なことだと思いますので,また一般の県民の方に関しましても,情報提供というものを強化していただければありがたいと思います。

◯B委員

続けて,暴力団の排除条例について何点かお伺いいたします。

現行,暴力団対策法というのがありますけれども,この暴力団排除条例との基本的な違いは何なのかということと,また,この条例において踏み込んだ点,これはどういうことなのか伺います。

◯刑事部組織犯罪対策統括官 暴力団対策法は,指定暴力団員の行う暴力的要求行為等についての規制及び暴力団の対立抗争等により市民生活に対する危険を防止するための措置等を規定することにより,国民の自由と権利を保護することを目的としております。

一方,本条例は,県,県民,事業者が,指定暴力団に限らず,すべての暴力団の排除のために行うべき事項を内容とし,県民の平穏な生活の確保と社会経済の健全な発展に寄与することを目的としております。

本条例では,特に事業者による暴力団員等に対する利益の供与等の禁止,青少年の健全な育成を図るための措置としての暴力団事務所の開設への禁止,暴力団事務所をつくらせないための不動産譲渡等の措置等を定めております。

暴力団対策法を初め,関係法令と連動して本条例を活用し,暴力団の排除活動をより強力に推進してまいる考えでございます。

◯B委員 わかりました。暴力団といっても,指定暴力団の組員とか,いわゆるフロント企業と言われていますけれども,県民からすれば見分けにくい面もありますけれども,暴力団とかその団員とか,そういう定義というのが何なのか,お示しいただければと思います。

◯警備部参事官兼組織犯罪対策課長 暴力団の定義といたしましては,先ほど委員のお話にありました暴力団対策法の第2条2号の中に,その団体の構成員が,集団的に,または常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体というふうに指定しておりまして,こういった要件を我々警察活動の中であらゆる手法を通して実態把握をして認定しているというところでございます。

◯B委員 次に,この条例の第8条にありますが,県民の協力を促すための支援を行うということがありましたけれども,捜査情報の秘匿性というものがある中で,例えばフロント企業の公表など積極的に行う考えがあるのか。また,フロント企業といっても県民はなかなかわからないというのもありますけれども,その辺はどういうお考えなのかお伺いします。

◯警備部参事官兼組織犯罪対策課長 フロント企業等の公表につきましては,条例案の第15条の中に,事業者による暴力団員等に対する利益供与の禁止という条項がございまして,その中で,事業者が暴力団員等に対して,その暴力団の活動を助け,または暴力団組織の運営に役立つこととなる利益の供与を行うことを禁止しております。

この中で,悪質な違反につきましては,公安委員会の行政指導として,調査をし,さらには勧告をし,公表といった手続をとる規定を定めているところでございます。

◯B委員 よく文言が難しくてわからないところがあるんですが,例えば先ほど神達委員もおっしゃっいました飲食店,例えば飲食店の経営者が,暴力団が販売するおしぼり,ウーロン茶など適正な価格で購入するような,いわゆる一般的な商取引というのは禁止行為に当たるのかどうか,その辺はいかがでしょうか。

◯警備部参事官兼組織犯罪対策課長 暴力団から商品を仕入れた対価として金銭を支払う,あるいはその金銭が十分な対価が認められるとしても,通常の売買行為は双方にとって利益のある行為だということになりますから,委員お尋ねの行為は,暴力団の利益の提供ということになりまして条例上違反行為に当たる,禁止行為に当たるというふうに解釈をいたしております。

これは,暴力団はあらゆる社会経済活動に介入して利益を得ておりまして,社会から暴力団を排除するためには,業種を問わず,あらゆる事業者が暴力団と決別をして適切に事業を行うべきであるということから,事業者による暴力団員等に対しての利益供与というものを禁止したという趣旨でございます。

◯B委員 そういう意味では,先ほど神達委員がおっしゃったように,しっかりと,この条例が施行する期間が来年23年の4月1日からということでありますので,その辺はしっかりこの条例の趣旨というのを説明していただければなと思います。

続きまして,条例の第13条に,暴力団事務所は小中学校等の周囲200メートルの区域内においては開設してはならないとありました。この条例の施行というのは,平成23年4月1日からですが,現在,茨城県下でこの区域にある事務所はどのぐらいあるのか。また,あわせて今後の既存の事務所への県警の対応をお聞かせいただければと思います。

◯警備部参事官兼組織犯罪対策課長 既存の暴力団事務所につきましては,118事務所把握しているところでございます。

13条関係につきましては,新規の事務所への規制ということになりますが,既存の事務所に関しましては,現在と同様,視察警戒等を徹底して,例えば賃貸借に係る事務所でありますと,その大家さんとの連携で排除している過去においては事例がございますので,そういった排除に向けての活動も推進してまいりたいと思っております。

◯B委員 条例が来年23年の4月1日ですから,その前に事務所開設ということもあるのかなと思うんですが,その辺はどういう御認識をお持ちですか。

◯警備部参事官兼組織犯罪対策課長 施行が来年の4月ということで,その間の事務所の設置に対しては,当然この条例にはかからないということになるわけでありますけれども,あらゆる暴力団対策の活動を通じまして,その辺の実態把握を含めながら対応を図っていくということを考えております。

◯B委員 この条例の最重要ポイントであります利益の供与の禁止について,事業者にとっては暴力団との関係を断ち切るチャンスである一方,大きなリスクをまた背負うのではないかというふうに思うわけですけれども,事業者にそういう断ち切る勇気を与えるのは,警察への絶大な信頼感であると思います。

最後に,警察本部長の暴力団壊滅へ向けての決意と,あわせて県民を暴力団から守り抜くという熱い思いを聞かせていただきまして,私の質問を終わります。

◯警察本部長 この条例が制定されますと,暴力団が反社会的勢力であるという,当たり前のことでありますが,これがまさに明確に示されまして,社会と暴力団が対決していくということが強くまさに打ち出されるというものになると考えております。

そういう意味で,これまで暴力団壊滅に向けていろいろ取り組んできましたけれども,この力がさらに強化されていくということで,私どもとしても大きなまた力を得ると思っておりますが,もちろん暴力団壊滅に向けて,第一義的責任を有するのは私ども警察であります。第一義というか,ほとんど私ども大変な責任があるという認識でございます。そうでありますから,まさにこの条例ができて,その上で,県警察が先頭に立ちまして,県民の安全の確保と,そしてまた安心して暮らしていただけるということをしっかりと確保するために,あらゆる法令を駆使しまして,暴力団に対する取り締まりをするのは当然のことですが,これを初めといたします各種暴力団総合対策を強力に推進してまいるということでやっていきたいと思っております。

◯文教治安委員長 ほかにありませんか。

◯C委員 付託の案件なので,今,この暴力団排除条例について今やりとりがあったので,1点だけ私の方から要望だけさせていただきたいと思います。

1つの例を挙げると,数年前に,客引きをやらせない,条例の名前忘れちゃったんですけど,条例つくりましたよね。つくった直後は,例えば私は水戸なんですけれども,大工町からぱあーっとそういう方々が消えて,健全なる飲食店の組合というか,地元の自治体から,まちがよくなったね,女性の方々が歩けるようになったよと,非常に条例が喜ばれる声というのが地元から聞かれたんですね。ただ,皆さん御存じのとおり,なかなか皆さんも人数少ないから年じゅう見回って取り締まるということはできないんでしょうけれども,のど元過ぎればじゃないけれども,時間が過ぎるとまた出てきちゃっているのが現状なんですね。それはそれで,しっかりこの条例にのっとってやっていただきたいというのもあるんですけれども,これらについても,やはり条例はずっとあるわけですから,この条例をつくったらばすぐ話題になる,新聞でも取り上げてもらえる,こういうふうなことになるんですよと,そういう業者だとか暴力団もこういう条例がなったということで自重する部分もある。ただ,また時間がたつと,これ平成23年4月ですけれども,例えば24年,25年ごろになると,また取引が始まったりとか,おしぼりの1本や2本いいだろうぐらいの話になったりとか,またそういうことになってきちゃうと条例の意味がなくなってしまう。その客引きの条例がまさにそのとおりなんだと思うんですね。これは付託案件じゃないから,しっかり取り締まりをやっていただきたいという要望だけしておきますけれども,やはりつくった以上は,最初に話題になったとき以外にも,ずっとこれ条例が存在する限り,この条例にのっとって市民も警察も暴力団も行動してもらうというようなことを,警察の中でちゃんとした体制を整えながら,今の意気込みの話じゃないけれども,そういう形でやっていただきたいなと思っております。

1つの例をとって,そういうふうに感じたものですから,要望だけさせていただきたいと思いますので,お願いしたいと思います。答弁は結構です。       以上

② 2011.03.10 : 平成23年文教治安常任委員会(条例施行直前の議論)

◯文教治安委員長 これより質疑に入ります。

質疑は,付託案件に関する質疑及びその他所管事項に関する質疑を一括して行います。

質疑がありましたら,お願いいたします。

細谷委員。

◯細谷委員 細谷でございます。私の方からは,暴力団排除条例と,今回の示された警察職員定員条例の一部を改正する条例に関連して御質問をさせていただきます。

まず,暴力団排除条例が4月1日から施行ということなんですけれども,新しい条例ですから,新しい組織,新しい対応ということになるかと思うんですが,人員など,新たにこの条例に伴って変化があるのかということを聞きたいと思います。

条例第6条で,職務執行の適正を確保するための体制の整備というのがありますので,これに関連づけて御見解をお願いしたいと思います。

それと,この条例は昨年つくられまして,ある程度日数を置いての施行ということなんですが,この間この条例をどのようにお知らせしてきたのか。特にこの条例はだれを対象に語っているのか,少しわかりにくい部分があるんですが,紛れもなく対象となる暴力団について,この条例を知らしめたのかということをお聞きしたいと思います。

県の方でも,指定暴力団松葉会初め5つ,あるいはこれに含まない組織も把握しているというふうにお聞きしておりますので,そちらの方についてどのようにお知らせをしてきたのか,してないのか。

もう1つは,この周知の中で,暴力団ということではなくて全体でいいと思うんですけれども,この条例をどのように受けとめたのか,御質問などがあったのかどうかお聞きしたいと思います。とりわけ基本的人権や健康上のかかわりで,この条例に関して質問などがあったのかどうかということについてお聞きしたいと思います。

議案との関連ということになりますが,議案は,人員の増加という議案になっております。理由は,今お聞きしましたとおり,公訴時効の廃止,あるいは死体取り扱い業務という理由ですから,これは明確に必要人員の数字の算定ができるかと思いますので,この点については説明を受けましたので了としたいと思いますが,しかし,これ以外に体感治安を改善するというような項目も入っているわけでございまして,この点については,犯罪が減少しているという状況から,こういう中で警察官を増員するという理由づけをどのように説明されるのか,お聞きしたいと思います。

この増員の中に,暴排条例が施行されるということに伴って増員したということについてはあるのかどうかということについても,あわせてお聞きしたいと思います。

◯D委員 委員長,質問を逐次にしてもらった方がいいな,わからないですね。

◯文教治安委員長 何本もあるから1本,1本で,一番最初の警務部警務課長。

◯警務部参事官兼警務課長 それでは,私の方からは,暴力団排除条例の施行に伴う体制の変化について申し上げます。

お手元の文教治安委員会資料の7ページをごらんいただきたいと思います。

この資料は,平成23年度茨城県警察の組織及び定員改正という題の資料でございます。これの大きな2番,概要,これの(2)のところに定員改正という部分がございます。これのアの警察本部,これの上から3つ目のマルのところに組織犯罪対策課暴力団対策係の増強とございますが,ここがまさに本条例施行に伴う体制の変化ということになります。

◯細谷委員 周知をどのようにされたのか。この暴排条例,暴力団にこの条例を理解させたのかどうか,そういう取り組みがあったのかどうかということについてお聞きしたいと思います。

◯刑事部組織犯罪対策統括官 暴力団排除条例につきましては,昨年9月に公布されてございます。その後ですけれども,県民や事業者等に対する周知活動としましては,チラシを3万枚,お手元にございますチラシでございます。さらには,ポスターを9,000枚作成いたしまして関係業者等に配布してございます。さらに,インターネットを活用いたしまして県警のホームページに条例をアップロードしてございます。さらには,ラジオ等の広報,それから懸垂幕を28警察署に掲出するなどの広報活動を推進しているところでございます。

さらには,今回の条例の中で不動産等の取引での不正等もございますので,建設業協会とか宅地建物取引業協会,銀行協会等々に対しましては説明会を開催するなどして,その周知を図っているところでございます。

暴力団に対しては特別周知の活動をしてございませんけれども,新聞報道等で御存じのようでございます。検挙した組員等の話ですが,条例について勉強しているとの供述をしております。

なお,本条例に規定する事項が基本的人権に抵触するかどうかにつきましては,これまでの委員会等での質疑の中でも,抵触するものについての質問はございませんでした。

◯細谷委員 指定暴力団,県下には5つありますけれども,それぞれ勉強しているということだそうですが,この条例の3条の2のところに,何人も暴力団と社会的に非難されるべき関係を持つことがないようにということになるんですが,この運用ということに関してお聞きしたいと思うんですが,通常の冠婚葬祭,あるいは親子親戚関係,こういうことにおいて結婚式などがあると思うんですけれども,これは県民の方に語っている条例だと思うんですが,暴力団などに招待状を出してはいけない,あるいは逆に暴力団の会やそういう式典に出てもいけないと,こういう理解になるんでしょうか。この点についてお聞きしたいと思います。

◯刑事部参事官兼組織犯罪対策課長 条例の第3条において,何人も暴力団と社会的に非難される関係を有してはならないというような規定がございますけれども,その社会的に非難される関係というのは,直接的に暴力団に対してお金を渡したり,あるいは暴力団を利用したりする関係ということ等含めまして,そういう関係を生じさせるような密接な関係,あるいは暴力団の威力の維持拡大につながるような助長行為を行う関係などなどが含まれますけれども,委員から御質問ありました親子関係とか,そういう関係だけをもって社会的に非難される関係とは解していないところであります。

◯細谷委員 それと,第5条に県民などの責務というところがありますけれども,この暴力団は県民などという中に含まれるのかどうかお聞きしたいと思います。とりわけこの条例の中で,暴力団などというカテゴリーの中に,暴力団をやめても5年間経過していない者は同格に扱うということになっていますけれども,この暴力団をやめた人,5年を経過していない人についても,あわせて御見解をお願いしたいと思います。

◯刑事部参事官兼組織犯罪対策課長 条例の規定上は,県民の中には暴力団を含んでいるというふうに解釈をしております。それで,暴力団をやめた人間,元暴力団という言い方をすれば,当然暴力団を県民に含むという話ですので,暴力団をやめた人間についても,当然県民として解釈をしているところであります。

◯細谷委員 御答弁いただきまして,極めて常識的な当たり前の条例ではないかなと判断させていただきました。

実は,私の近辺には,昨年選挙もありましたので多くの人と接しましたけれども,だれ一人,暴力団を日常的に脅威に感じていると言われた方はお一人もいませんでした。もちろん暴力団の被害があって困っているということも訴えられたこともなかったわけであります。ただ,県下にはこれだけの数が存在するわけですから,暴力団はいると思うんですが,だれも被害を受けていないと,こういう状況。私の周りだけかもしれませんけれども,そういうことなもので,地域とうまく溶け込んでいるのではないかなと思います。

ただ,この条例運用いかんによっては,人権上も疑義が生じさせるかもしれないというようなことがあるわけですから,この条例の適用がされないということが一番好ましいんだろうと思います。まだこれから,4月1日からの施行ですから,今後憲法上重大な疑義があらわれてくるとすれば,改めて指摘させていただきたいということを申し上げまして,これで本日はとどめたいと思います。

◯文教治安委員長 ほかにありませんか。 D委員。

◯D委員 予算審議の場でございますけれども,先ほど県の暴力団排除条例について委員から質問が出たところでもございまして,私ちょっとそこの中で見解を示したいものが1つあります。

先ほどの委員からは,憲法に抵触する重大な疑義云々という文言が発せられましたが,これは私ども茨城県議会にとっても非常に重い言葉でございまして,私ども県議会が慎重に真剣に議論をした,そして認めた条例に対して,同じ県議会議員から憲法上の疑義が発生する余地云々の言葉が出たこと自体,非常に,申しわけございませんが,不愉快でございます。しかし,このようなこと自体はあってはならないことだと考えますので,最初に,この条例が日本国憲法,特に基本的人権というものに重大な疑義とか一切発生はしていない,憲法上も条例として認められているわけでございますから,何ら問題がないということをまず県警本部の責任ある方から,どなたでも結構です,明確に表明をしていただきたい。

◯刑事部組織犯罪対策統括官 本条例につきましては,暴力団事務所の開設運営に関する規制及び暴力団員等がかかわる利益供与に関する規定が,いわゆる憲法上の規定にかかわると思われますけれども,いずれも憲法には抵触しないものと考えております。

これまで,条例制定に向けまして関係機関等との検討もしておりますけれども,この分についての問題は指摘されておりません。

なお,暴力団対策法等につきましても,国会審議の中で結社の自由を侵害するおそれはないかとの質疑等ありましたけれども,当時の警察庁長官が,憲法の結社の自由を侵すものではないという答弁をしてございます。

◯D委員 その辺は,質問が出ていないとしても,憲法に抵触する疑義があると言われたら,これは県警本部からしっかり反論していただいて結構です。逆に,そういう打ち合いがなければ,新しく入ってきた方もいらっしゃる,またこの情報がこれから県民に知らされることがあるならば,県会議員からこれは疑義があるような条例なのかと言われたら,骨抜きになっちゃいますよ。

ということをまず指摘をさせていただいた上で,持ち上げておいた上で,ちょっと持ち下げなくちゃいけない。

この17条の文言は,次のときに,どうしても私は改正をする方向で,いきなり4月1日から施行する段階で改正しろというのはおかしいんだけれども,これは提案をさせていただきたいと思います。文言が難しくてわからない。

第17条,暴力団員等は,情を知って事業者から第15条第1項の規定に違反する利益の供与を受け云々というのがあります。ここで私が指摘したいのは,「情を知って」という言葉です。情を知っての「情」とは,情けということですね。これはどういう意味なのか,簡単に説明していただきたい。「情を知って」とは。

◯刑事部参事官兼組織犯罪対策課長 事業者が,暴力団の活動を助長し,またはその運営に資する,暴力団の活動を助けたり,その運営に役立つような,そういった利益供与を禁止しているわけで,事業者側が禁止しているわけで,その事業者が行う利益供与に対して,受供与の相手である暴力団が,そういう運営を助けたり組織のために役立つ利益供与だということを知ってという意味でございます。

◯D委員 法律用語としての「情を知って」という文言はいろいろなところにありますので,それは私ども勉強すればわかるような気がします。でも,一般的に県民の皆さんが,この「情を知って」といったときに何と受けるか。やっぱりこの「情を知って」というのは,情けなんですよ。わかりますか。「情報」とか「実情」とか,そういうふうには一般的には受けられていないので,今,ほかの県の条例や,また法律でも,この「情を知って」という文言については,なるべく使わない方向でわかりやすい表現に変えるという議論が進んでいるというふうに理解をしておりますが,そういう認識はございましたでしょうか。

◯刑事部参事官兼組織犯罪対策課長 その文意につきましては,事情を知ってという意味で法令上の中で使わせてもらったということで,全体的な流れの中の動きというものは,現時点,私どもでは承知をしていないところであります。

◯D委員 例えば著作権法なんかの議論の中でも,これは非常に多く問題になりまして,その議論の中では,「事実を知りながら」というふうに文言が変えられたという経緯を私ども認識しております。「事実を知りながら」,「実情を知りながら」とか,そうしないと……もちろん法律の専門家にとってみれば何ら問題のない言葉なんですが,この暴力団排除条例自体が,県民の皆様への啓発の1つであるということも考えれば,この文言が間違っているということは一切言いません。今後見直しの際には,やはり県民の皆さんにもわかりやすい,一般の方にもわかりやすい表現に変える,そういう御努力もぜひ今後していただきたいというふうに思います。

4月からの施行に当たりましては,こういった条例を駆使しながら暴力団の排除,茨城県は暴力団がいないとまで言っていただけるような1つの活動に期待をしたいというふうに思っております。一言,この暴力団排除条例に関しまして,所感を質問させていただきました。                                 以上

以上が、条例制定時(2010年9月)と施行前(2011年3月)の審議模様である。私の県議会議員としての活動は2011年1月からであり残念ながら制定時の議論には加われなかった。文教治安委員会所属となり施行前に「憲法違反の疑義があれば指摘する」という発言にとどまらざるを得なかった。

しかし、ここに勇気ある請願者により県議会本会議で暴力団排除条例について反対を表明する機会を得られた。全員反対の中での賛成討論であり「狂瀾に船出」するようなものであったが、条例廃止に向けた第一歩であることを確信する。

行政は無論のこと、世論、マスコミなど社会全般で推し進められる暴力団排除キャンペーンに抗しての極少数派の主張であり、私の主張にも思いが至らない部分があるかもしれない。

皆様の、ご叱正、ご教示をいただければ幸いである。

県議会での請願賛成の討論は、暴排条例のあいまいさ、暴力団といわれる組織=近代のヤクザの出自と歴史的背景、憲法からの判断などを述べた。3分間という時間的制約で意を尽くせないものとなっているが以下討論の全文である。

【24請願第5号 暴力団排除条例の再考を求める請願に賛成する討論】

再考を求める第一の理由は条例のあいまいさにあります。

条例で、暴力団等への利益供与を禁ずるならば、その前提として、暴力団員、準構成員、元暴力団員、共生者、および暴力団と社会的に非難されるものとの関係などの定義、認定の基準、審査方法、不服申し立てなどを内容とする法律がなければなりません。

請願者は、条例に関してあいまいさが残っていることを指摘し、明らかにするよう求めています。

暴力団といわれる組織に身を投じた多くのものは貧困の中で飢えをしのぐため、また、さまざまな差別や偏見にさいなまれ、社会に出てもあらゆる門戸が閉ざされ虐げられる中、自らの力だけを信じて、生きんがために肩を寄せ合うように集った生活集団であります。

暴力団の近代における源は、明治政府による殖産興業策において、最も過酷な労働を強いられた炭鉱、鉱山、港湾荷役、土木業などに流れ込んできた流民労働者であります。法の支配も及ばない、劣悪な環境の最底辺の職場から這い上がって生れ出た組織であります。

このような暴力団の出自や歴史的背景を一顧だにすることなく、一方的に排除しようすることには、異議を唱えざるを得ません。

貧困と差別が暴力団を生み出しております。排除よりも善導することが何よりも必要であります。

もとより暴力行為は許されるものではありませんが、これを処罰する刑法はすでに存在しています。暴力団と指定し特別に法的規制をすることは、法の下に何人も平等と定めた憲法の精神に反するものと考えます。

請願では、憲法の問題も指摘しております。憲法上からも本条例は再考されるべきものであることを申し上げまして、賛成討論といたします。

以上

3.雑感

私は、青年時代から憲法の理念を暮らしに生かすために、それだけのためにといってもいい政治活動を行ってきた身からすると、人生の後半の後半に差し掛かってとんでもない憲法問題に遭遇したというのが実感です。人権や信条など憲法の課題に関わってきましたが、暴力団排除条例はそれ以前の問題=人間として生きることを認めないというものです。

人間でありながら人間としての生活が認められない層を人工的につくっています。今では誰しも江戸時代の身分制度である穢多を容認する人はいないでしょう。しかしいま暴力団という新しい身分がつくられようとしています。これに対しては自らの信念に従って身を処していく決意です。

暴力団問題を解決する道は、事実に基づいて、悪いものは刑法で罰することに徹底することにつきます。

そして、暴力団という法的名称は改めることを提案します。「暴力団」ということでなんでも悪いものと連想し、そこで思考停止してしまいます。近代ヤクザ組織としての正式な名称を使うようにすべきです。

そのうえでヤクザ組織自身としては、「強きをくじき弱きを助ける」伝統的な任侠道を今一度思い起こすことが必要であると考えます。

明治から昭和初期の底辺で生活する労働者、庶民の生活は困難を極めました。これを取り上げ解決の道筋を示すことが社会主義政党、労働組合に求められていました。

しかし、社会主義政党は最底辺の労働現場と遊離し、大衆のいないところでの活動となり残念ながら庶民の支持を得ることはできませんでした。労働組合は順次体制に込みこまれ全体が体制翼賛と化し、労働組合運動を作り出すことはできませんでした。

社会主義陣営が崩れていく中、民衆が飢餓線上や災害で困窮を極めたときに改革改善の先頭に立ったのがヤクザ・博徒の集団でした。秩父困民党事件、米騒動、戦後では、戦争直後の動乱期の治安維持、阪神大震災時の対応など。理論を振り回し行動の伴わない社会主義者よりも庶民にとっては頼もしい味方だったのです。

物事には悪い面と良い面の両面があります。いま暴力団と指弾されていますが、「民衆の嫌われ者」だけでしたらヤクザは今日まで存在することが出来たでしょうか。

近代ヤクザが民衆の味方として行動した事例を挙げましたが、上記のような役割を果たしたことがあったことなど暴対法、暴排条例の議論の際に行われなかったことが返す返すも残念です。

しかし、今や暴力団には暴力団排除条例によってそのような役割を果たすことは望むべくもないのです。

以上

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